飯能市、大林組と協定締結 循環型森林利用ビジネスモデル構築
飯能市はこのほど、大林組(本社・東京都港区、蓮輪賢治社長)と循環型森林利用に関する基本協定を締結した。同協定は、両者が連携・協力し、飯能市の森林・林業再生の解決策を循環型森林利用ビジネスモデル(飯能モデル)として構築し、林業振興と森林の持つ多面的機能の高度発揮に取り組むとともに、地方創生やまちづくりに繋げることを目的としたもの。
同市役所で行われた締結式では、大久保勝市長と蓮輪社長が協定書にサインを交わした。同社が循環型森林利用を目的に自治体と協定を結ぶのは初めて。
市域の75%を占める森林を持ち、水源地を抱える同市は、森林の持つ多面的機能を将来にわたり維持・増進していくため、現在市が取り組んでいる水源地域間伐事業により健全な森林を次世代へ引き継ぐとともに、生業としての林業で利益を生み出す仕組みづくりのほか、森林を林業以外の観光や教育、健康づくりなどの新たな産業のフィールドとしての利活用に取り組み、飯能独自の森林資源利活用のビジネスモデルの構築を目指している。
一方、大林組は、国土の7割を占める森林が伐採期にありながら資源として上手く活用出来ていない課題をビジネスの力で解決したいと考え、山林所有者に再造林可能な収益を還元出来る循環型森林ビジネスの実現を目指して活動。
首都圏近郊の歴史ある林業地となる飯能市を中心とする西川林業地には以前から注目し、関係者が平成29年に市内で木材業を営む製材会社の講演を聞いたことや、28年度に市が実施した西川材バイオマス利用調査の結果について資料請求したことなどをきっかけに、小規模林業地が抱える課題とその解決策などについて市と意見交換を始めた。
意見交換では、首都圏に最も近い本格的な林業地となる市の森林の魅力と地理的優位性に着目し、森林・林業再生の解決策を、循環型森林利用に必要な収益を山林所有者に還元できるビジネスモデルとして形にしたいという共通の想いを確認したという。
その後、大林組は、地域林業の中核的な組織となる西川地区木材業組合や西川広域森林組合等に対し、市を介して呼び掛け、循環型森林利用ビジネスモデルの確立に向けたきっかけとして、ICTなどの先端技術を活用し、効率的な森林施業や需要に応じた木材の安定供給を実現するスマート林業技術の導入を提案。賛同した地域の森林・林業・木材業関係者と有志の会を立ち上げ、検討を重ねた。
市は、林業技術実装の必要性を理解し、この取り組みを支援。西川地域を構成する日高市、毛呂山町、越生町の賛同も得て、令和2年5月には、西川材スマート林業協議会を設立し、林野庁のモデル事業の採択を経て、2年度から3年計画で事業に着手し、現在2年目を迎えている。
大林組が地域の関係者と連携・協力し、林業・木材産業再生に向けた取り組みを進める中、市は同社の循環型森林ビジネスモデル構築にかける強い思いや、これから本格化する中大規模・非住宅木造建築や木質バイオマスのエネルギー利用について知見を持つことなどを評価し、林業にとどまらない、飯能の森林の循環利用を通じた地方創生やまちづくりに向けた連携のあり方を同社とともに模索。
両者の連携・協力により森林・林業再生といった社会的課題の解決策を、飯能市と大林組が循環型森林利用ビジネスモデル(飯能モデル)として構築し、林業振興と森林の有する多面的機能の高度発揮に取り組むとともに、地方創生やまちづくりにつなげるため、協定締結に至った。
協定の連携・協力事項は、①地域と連携した循環型森林利用②地域と連携した西川材の需要拡大③森林資源を有効活用する木材コンビナート④地域の新たな魅力創出に向けた森林の多面的活用⑤森林共生都市の構築による地方創生など。