特殊詐欺被害を防げ 開店間近のコンビニで対応訓練

レジ前では高額の電子マネーを購入しようとする被害者役を説得した

 医療費や保険金の還付金があるなどとしてコンビニエンスストアのATMから現金を振り込ませる還付金詐欺、有料サイトの利用料金未納分の支払いを求めるメールやハガキを送りコンビニで電子マネー等を購入させ番号を聞き出す架空料金請求詐欺など、コンビニを使った特殊詐欺による被害が多発していることから、飯能署(松崎直樹署長)は14日、日高市武蔵台に新規開店予定の店舗で特殊詐欺対応訓練を実施した。

 訓練が行われたのは、20日にオープンするローソン日高武蔵台店。同店の従業員・関係者10人が参加し、飯能署員とともに還付金詐欺、架空料金請求詐欺を想定した訓練にあたった。

 還付金詐欺の対応訓練では、被害者役の署員が携帯電話で話をしながら入店し、市役所職員らしき電話口の相手から指示を受けながらATMの操作を開始。

 その様子を不審に感じた男性店員が「今、電話で還付金というお話をしていましたが、ATMで還付金は受け取れません」などと声をかけた。

 被害者役の署員は「はやく手続きをしないと還付金が戻ってこなくなってしまう」と相手方の話をすっかり信じ込んでいる様子を演じたが、対応にあたった従業員は警察から配布された注意喚起の資料を示しながら、「このような詐欺被害が相次いでいます」「一度電話を切って確認を取りましょう」などと冷静に粘り強く説得した。

 また、架空料金請求詐欺の対応訓練では、電子マネーの棚から高額のカードを数枚取り、レジで購入しようとした署員扮する被害者役に対し、女性店員が「カード購入の方への確認ですが、ウイルスに感染したパソコンの修理のお支払いに利用するものではありませんか」と声をかけた。

 被害者役の署員はいぶかしげな表情を浮かべながらも「インターネットのサイトを見ていたらウイルスに感染したと表示され、画面に出ていた電話番号に連絡したら、修理費用がかかるから、コンビニに行って電子マネーのカードを買って番号を教えてくれれば手続きできると言われた」と事情を話し、従業員は「そういった手口の詐欺が増えています。まずは警察に確認してみましょう」と丁寧に説得した。

 訓練で対応にあたった店員の辻太輝さん、関紅葉(くれは)さんは、「説得しても、被害者役の人はすぐには受け入れてくれなかった。被害者の多くは信じ込んでしまっているのが現実だと思う」と感想を語り、「危機感を持って業務にあたり、被害を減らしていくことが大切と感じた」「いつでも起こり得るということを常に頭に入れておき、いざという時に正しい対応ができるようにしたい」。

 また、店長の松本昭也さんは「高齢の方が多い地域なので、日頃の接客に加え、目配りをしながら積極的な声掛けをしていけるようにしていきたい」と述べた。

 飯能署の柴田正樹生活安全課長は、「声かけのタイミングが良く、説明も丁寧で分かりやすかった。気になるお客には声をかけて頂き、不審な点があったらすぐに110番して頂きたい」「管内では今年、還付金詐欺は3件、架空請求詐欺は2件の被害が発生している。一方でコンビニエンスストアの皆様のご協力により、8件の被害防止を行っている。1件でも多く被害を食い止めて頂きたい」と呼びかけた。

 飯能署管内の今年の特殊詐欺による被害は、13日現在10件で被害額は約2587万円。

 管内で横行している特殊詐欺の手口は、還付金詐欺や架空請求詐欺のほか、親族を装い仕事のトラブルや事件事故に巻き込まれたなどの名目で、振り込みや手渡しにより現金を騙し取る「オレオレ詐欺」をはじめ、警察官や金融機関職員などを装い不正利用防止などを名目にキャッシュカードを新しくする必要があるなどと持ちかけて自宅を訪問し手渡しでキャッシュカードを騙し取る「預貯金詐欺(キャッシュカード手交型詐欺)」などがある。

 同署は、「お金が必要」といった内容の電話があった場合は一度電話を切り、まずは家族や警察に相談する。また、不審な相手と話さないようにすることが重要として、電話を留守番電話に設定する、ナンバーディスプレイで相手を確認し、知らない番号には出ないといった対策などを呼びかけている。