74年の歴史に幕 名栗中で閉校式 学び舎との別れ惜しむ
生徒数の減少に伴い3月31日で閉校する飯能市立名栗中学校(岩崎隆校長、生徒数18人)の閉校式が14日、同校体育館で開かれ、生徒、保護者、地域住民、関係者など約160人が出席した。
名栗中は昭和22年に開校し、74年の歴史の中で3189人の卒業生を送り出したが、少子化などにより生徒数は減少の一途をたどり、望ましい教育環境の確保が困難として閉校が決定。在校生は4月から原市場中学校へ通う。
閉校式では閉校記念事業実行委員会の竹内章浩委員長、大久保勝市長、岩崎校長、國﨑惠美子PTA会長、生徒会長の小峰雅司さん(2年生)が壇上に立ち、学校の沿革や行事・部活動の思い出などを振り返り、閉校を惜しんだほか、校旗返納や生徒たちによる校歌斉唱、記念映像の上映が行われた。
名栗中は昭和22年の学校制度改革に伴い、名栗村立名栗中学校として名栗中央小学校に併設して開校。
27年に現在地に木造の新校舎が竣工し、優良施設校として文部大臣表彰を受賞、同30年に校歌制定、31年には保健体育優良校として全国表彰を受けた。
開校以来、高度成長期の木材需要により41年までは200人以上の生徒数を誇った。61年に現在の校舎が完成。
平成4年にコンピュータ機器が特別教室に設置され、8年には卓球女子団体で県大会9連覇を達成し全国大会に出場、9年に創立50周年を迎えた。
17年には飯能市と名栗村の合併により飯能市立名栗中学校となり、校旗を新調。以来、「進んで学び、心豊かに、たくましく生きる生徒」を学校教育目標に学校運営を行ってきたが、少子化などの影響で生徒数は年々減少。望ましい教育環境の確保が困難として閉校し、原市場中への編入が決まった。
閉校にあたっては、学校・地域関係者による閉校記念実行委員会が組織され、記念誌の発行、記念映像DVDの制作、閉校式の準備が進められた。
閉校式で、閉校記念事業実行委員会の竹内委員長は、これまで学校を支えた地域の人々や関係者に感謝するとともに、「学んだ学校がなくなるということは断腸の思いだと思う。名栗中は“小さな学校の大きな力”との言葉通り、少ない生徒数でさまざまな行事に取り組み、他ではできない貴重な体験ができたのではないか。最後の卒業生となる皆さんは、名栗中の卒業生であるという誇りを胸に、希望に満ちた新しい道を一歩一歩力強く進まれることを心から願う。皆さんの築き上げて来た歴史は、同窓生や地域の皆さんの心の中に生き続けることと思う。在校生は4月から原市場中学校に編入されるが、名栗中の生徒だったという誇りを忘れず、新しい仲間と絆を深め、楽しい学校生活を送ってくれることを願う」と述べた。
自身も同校の卒業生となる大久保市長は学校の沿革を振り返り、「私もこの名栗中で中学校生活を送らせて頂いた。風が吹くとカタカタと揺れる窓ガラス、歩くとギシギシときしむ廊下、2階教室で騒ぐと天井からほこりが舞い落ちる1階教室など、木造校舎ならではの忘れられない思い出があり、半世紀もの昔の記憶が鮮明に蘇ってくる」と回顧。
閉校の経緯ついて「今後の生徒数の推移を踏まえ、保護者や関係者の皆様との意見交換を行うなど、名栗中の今後のあり方について検討を重ねてきた。今の中学生のことを最優先に考え、総合的な見地から、正に苦渋の決断ではあるが、名栗中と原市場中とを、発展的に一つとすることが最良とする結論に至った。生徒の将来を見据え、中学生の今だから出来ること、今しか出来ないことに向け、生徒一人ひとりがチャレンジできる環境を整えることが、我々大人の、人生の先輩としての大きな役目」と理解を求め、「生徒の皆さんはこれまでとの環境の変化に戸惑いを感じることがあるかも知れないが、名栗中の伝統と誇りを胸に、原市場中でも充実した中学校生活を送って下さい」と激励した。
その後、校旗返納として岩崎校長から今井直己教育長へ校旗が手渡され、岩崎校長、國﨑PTA会長、生徒会長の小峰さんが壇上で関係者に感謝。その後、閉校記念映像が上映された。
岩崎校長は、閉校までの最後の1年間、コロナ禍の影響で学校行事の中止が相次いだが、生徒たちや教職員の努力と地域の支えにより、思い出に残るいくつかの行事が実施できたことに感謝し、「この学校を閉じる寂しさ、新たな環境への不安など生徒や保護者の皆様にはさまざまな思いがあると思う。私たち学校職員にとっても勤めてきた学校がなくなるというのは大変寂しいことではあるが、私は悲しいこととは捉えたくない。私たち大人が、子どもたちの教育環境を整えたいと考えて判断したこと。緊張の中、前向きに進んでいく子どもたちを心から応援したい。原市場中の温かい受け入れ体制によって、生徒は交流を深めるたびに友達ができることの喜びを感じ、新たな環境への期待が膨らみつつある。編入によって名栗地区、原市場地区の素晴らしさを再認識し、教育環境の一層の充実と生徒の生きる力の育成に結びつくことと確信している」。
生徒会長の小峰さんは「諸先輩が築き上げてきたたくさんの伝統は今も受け継がれ、近年では “小さな学校の大きな力”というスローガンが生まれた。これは、自分たちができることをやっていこう、という意思の表れ」として、学校生活で取り組んできた成果を紹介し、「改めて皆さんのご支援があって今の僕たちがあることを深く実感している。74年の歴史を持つ学び舎で学んできたことを誇りに思い、身に付けたさまざまなことを心に刻み、より良い名栗中のために伝統を築いてきた諸先輩方の名栗魂とともに、新しい学校でも頑張ることを誓い、最後の在校生18人の言葉とします」と締め括った。
閉校式後には地域住民などを対象に校内見学の時間も設けられた。16日に卒業式を迎えた3年生の町田翔太さんは、「合同運動会で小学生や地域の皆さんと一緒に協力できたことなどが思い出に残っている。自分たちが最後の卒業生となり、学校がなくなってしまうのは寂しいが、後輩たちには新しい環境で、一人ひとりの個性を生かして頑張ってほしい」と話した。