飲食店へ見舞金持参し夜間飲食 山田議員が辞職

議場で謝罪の場を求める山田議員

 飯能市議会(平沼弘議長)3月定例会最終日となった3日、開会直後に野田直人議員(みどりの会)から議事進行がかかり、山田利子議員(共産党)が2月22日夜8時過ぎに市内の飲食店で飲食していたことが判明したとして、「緊急事態宣言下の自粛期間中、市民の信頼を裏切り市議会の信頼を著しく失墜させる行為」と糾弾、議長の見解を質した。

 休憩中、全議員出席のもと山田議員に説明を求める場が設けられ、山田議員は懇意にしている知人が入院したため、その家族が経営する飲食店へ見舞いを目的に訪問し、見舞金を渡した後、無償で酒の提供を受けたなどと説明。

 夜間の飲食に加え、見舞金を渡し無償で酒の提供を受けたなどの行為について、複数の議員から「公職選挙法に抵触するおそれがある」「議員としてあるまじき行為」といった指摘があり、これを受け山田議員は議長宛に辞職願を提出、全会一致で許可された。さらに、公選法抵触等について警察へ告発すべきとの声も上がり、平沼議長は「本件の重要性を鑑み、適切に対応する」と述べた。

 野田議員の議事進行から山田議員が辞職に至るまでの間、休憩中の確認作業を挟み要した時間は7時間以上。本会議では保守・公明の7議員が登壇し、山田議員の行動に関して議長の見解を質した。

 本会議での主なやり取りは次の通り。

 ▽野田議員=議長のお許しを頂き議事進行をかけさせて頂いた。私たち保守系議員団は市の職員の皆様がコロナ対策、ワクチン接種等の準備のため少しでも軽減になればということで、一般質問を取りやめさせて頂いた。議会最終日冒頭で議事進行をかけさせて頂いたのはそれだけ重要な案件であるから。

 この後論旨を申し上げるが、共産党議員の皆様がかばい切れない事実を発言させて頂く。保守系議員、職員の皆様からは「本当かよ」「やってられないよ」という声が聞こえてきそうだ。令和3年1月31日付の「新飯能」には、「コロナ感染が拡大している最中に野口副議長をはじめ保守公明の議員6人がランチミーティングで濃厚接触者になって市議会を欠席ですって。ふざけるな」との記事があった。

 共産党の皆さんにはそのままお返しさせて頂く。ぜひ日本共産党中央委員会に連絡し、今後の去就を相談してみて下さい。そして事実を新飯能に活字にして大きく掲載して下さい。それでは本旨に入る。

 共産党の山田利子議員が緊急事態宣言真っ只中の2月22日午後9時40分過ぎまで市内の飲食店を訪れ、そこで飲食をしていた事実が判明したので、そのことに対して議長の見解を求める。

 「こちらは、防災はんのうです。 緊急事態宣言が発令されています。市民の皆様には、不要不急の外出、特に午後8時以降の夜間外出は控えてください。一人一人の行動が極めて重要です。くれぐれも感染しない、させない行動を徹底してください」。

 皆さん、この防災無線を毎日聞いて、夜間の外出を自粛していることと思う。本年1月7日に埼玉県を含む1都3県に緊急事態宣言が発令され、3月7日まで期間が延長され、また再延長も囁かれる中、国・県・市では新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針に基づき、不要不急の外出、移動等の自粛の徹底を呼び掛けている最中であり、3月定例会の開会中でもある。

 国会では夜間に飲食店を訪れていたことが発覚し、自民党の松本純元国家公安委員長、大塚高司議員、田野瀬太道議員が離党し、公明党の遠山清彦前財務副大臣が議員辞職する事態に発展している中でのこと。このことについて日本共産党の小池晃書記長は、夜間に飲食店を訪れた問題で離党したことは言語道断、前代未聞だ、当然3氏とも議員辞職すべきだと述べている。

 他党には厳しく、自分の所には甘いのでは納得いかない。このように市職員が一丸となっている中、なぜこのような外出をし飲食店にいたのか、私には全く理解ができない。市民の協力をお願いする立場であり、率先して範を示すべき市議会議員が、夜間外出し飲食店に滞在していたことは市民の信頼を裏切り市議会の信頼を著しく失墜させる行為である。このことについて議長の見解を求める。

 さらに申し上げれば、小池晃書記長は、自民党が3氏を離党させたことについて、党に迷惑をかけたということだけでなく、国民を裏切ったと批判している。これを飯能市に置き換えれば、山田議員は飯能市民を裏切ったということになると考える。

 ▽平沼議長=事実であれば本当に大きな問題。その確認のため休憩する。(再開後)野田議員の議事進行にお答えする。休憩中、山田議員に確認したところ、2月22日の夜間に外出し飲食店を訪れていたことは事実であるとのこと。

 ▽野田議員=ただいま議長から事実を確認したとの答弁がなされたが、このことについて議長はどのような見解をお持ちか。

 ▽平沼議長=大変遺憾である。議会としても大きな問題であると思っている。

 ▽砂長恒夫議員(みどりの会)=野田議員の議事進行に対し、議長から大変遺憾であるとの答弁があった。これは、飯能市議会として大きな問題である。我々議員はその事実を知る権利がある。山田議員本人から当日の行動について直接説明を求める場を設けていただきたい。議長の見解を伺う。

 ▽平沼議長=この件について直ちに休憩し代表者会議を開きたい。(再開後)砂長議員の議事進行についてお答えする。休憩中の代表者会議で山田議員に説明を求めることとなり、全議員の出席のもと山田議員から説明を受けた。以下、山田議員の説明内容を報告する。

 山田議員は2月22日午後8時少し前に、隣組の飲食店へ家族が骨折をしたのでお見舞いを持って訪ね、午後8時を過ぎても引き続き飲食店に滞在していた。飲食店でアルコールを出され、ビールを中瓶1本と水割り、おつまみをご馳走になり代金は支払わなかった。

 夜8時頃にお見舞いを持って行ったのはなかなか店主に会うことができず、当日が大安であったからだということで、お見舞いは現金だった。また、飲食店で飲食し店を出た時間は覚えていないということ。なお、説明会において共産党の金子(敏江)代表からは「議員として慎重に行動すべきであった」との発言があったので申し添える。

 ▽大津力議員(NEXTはんのう)=ただ今の議長の報告について議長に見解を尋ねる。ただ今の報告の中でお見舞いに現金を、という発言があったが、これは皆様もご承知の通り公職選挙法に違反する行為であると思う。これも本人からの供述ということから、これをこのまま議会が見逃すことは如何なものか、議長に見解を尋ねる。

 ▽平沼議長=確認のため休憩する。(再開後)大津議員の議事進行にお答えする。公職選挙法第199条の2第1項では、公職の候補者または公職の候補者となろうとする者は当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義を問わず、寄付をしてはならないと規定している。

 また、例外として、政党その他の政治団体もしくはその支部または当該公職の候補者等の親族に対してする場合及び、当該公職の補者等が専ら政治上の主義または施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会に対し、必要やむを得ない実費の補償としてする場合はこの限りでない、と規定されている。

 なお、公職の候補者等の親族とは、六親等内の血族、配偶者及び三親等内の姻族を言うということである。山田議員のお見舞いの相手方がこの例外規定に該当しない場合には、公職選挙法に抵触するおそれがあると思われる。

 ▽山田議員=私の軽率な、また、認識の甘い行動から、私自身、深く皆さんに陳謝を申し上げたいと思うので、その場を設けて頂きたいと議長にお願いする。

 ▽平沼議長=今の発言は議事進行ではないと考える。

 ▽内田健次議員(飯能みらい)=訪問先の店で飲酒があったとの報告だった。普段からアクティブな山田議員。自転車を駆使して日々の活動を行っているのを承知しているが、当日は自転車の利用はなかったのか。あったとしたらどのように帰ったのか。このことは報告が無かったので議長の見解を伺う。飲酒運転の疑いも含めて事実確認をお願いしたい。

 ▽平沼議長=確認のため休憩する。(再開後)内田議員の議事進行にお答えする。山田議員に確認したところ、自転車を押して帰ったとのことだった。

 ▽栗原義幸議員(公明党)=この緊急事態宣言下、全市民が外出の自粛をし、感染拡大防止のご協力を頂いているにも関わらず、本人はお見舞いを理由に20時以降に外出し、無償で飲食の提供を受けたことなど一連の経緯と事実が明らかになった。

 むろん議員の立場でお見舞いでの金銭供与や無償の飲食の提供を受けることは、議長の見解の通り法に反することであり、議会議員としてあるまじき行為であることは明白。

 また、コロナ救済支援策の条件を誰よりも知るべき立場でその飲食店が経済支援も受けられない状況まで議員自らが作り出しており、一連の経緯について本人にそのつもりはないとか知らなかったということは全く通用するものではない。

 議会基本条例にも議員は高い倫理性と公正かつ精錬を基本姿勢とし自己研鑽に努め、資質を高める不断の努力をすることとある。今回の行動は議会の品位を著しく汚す行為である。

 わが党、公明党の国会議員は猛省し潔く議員辞職の道を選んだ。日本共産党書記長も言語道断、前代未聞だと述べている。政治は信なくば立たず。このまま議員として続けるのであれば、党中央幹部と方向性が異なるものではないか。

 本日最終日、次年度予算案ほか本市において最も重要案件の議決を要する議会にこうした議員が存在したまま、我々議員として、また飯能市議会としても極めて重要な議会の議事を進めるわけにはいかない。議長の見解を求める。

 ▽平沼議長=議長としても大変遺憾だと思っている。次に、山田議員から辞職願が提出された。休憩して代表者会議、議会運営委員会を開催する。(再開後)議会運営員会の結果について報告を求める。

 ▽中元太議会運営委員長=休憩中、山田議員から議長に議員辞職願が提出されたので、その取扱いについて協議した。この際、山田議員の議員辞職の件を本日の議事日程に追加し直ちに議題とすることに決定した。

 ▽平沼議長=ただ今、山田利子議員から議員辞職願が提出された。お諮りする。この際、山田議員の議員辞職の件を日程に追加し直ちに議題としたいがご異議ないか。(異議なしの声)。ご異議なしと認める。よって山田議員の議員辞職の件を日程に追加し直ちに議題とすることに決定した。

 山田議員の議員辞職の件を議題とする。地方自治法第117条の規定により山田議員の退席を求める。(山田議員退席後)山田議員の辞職願を報告する。事務局長に朗読させる。

 ▽山崎晃男議会事務局長=辞職願、今般、一身上の都合により飯能市議会議員を辞職したいので許可されるよう願い出ます。令和3年3月3日、山田利子。飯能市議会議長平沼博様。

 ▽平沼議長=お諮りする。山田議員の議員の辞職を許可することにご異議ないか。(異議なしの声)。ご異議なしと認める。よって、山田議員の議員の辞職を許可することに決定した。

 ▽野田議員=ただ今、山田議員の辞職が決定した。飛ぶ鳥跡を濁さずという格言があるが、先ほど私は新井巧議員より控室の前で個人名を挙げられ、地雷を踏んでしまったというようなことを聞いた。議長も全員協議の席で個人名は出さない、店の名前は出さないと言ったが、山田議員は新井議員に全て話し辞職された。そのようなことがあっていいのか。私自身も保守系議員に店の名前など当然言っていない。

 山田議員は相当重いことをやっているわけで、議長から何らかの処理をして頂きたい。また、最初に私は今回のことは新飯能に大きく取り上げて欲しいと発言した。そのことについて議長から見解がないので、そのことについて見解をお聞きしたい。

 ▽平沼議長=確認のため休憩する。(再開後)野田議員の議事進行にお答えする。休憩中に新井議員に対し、山田議員の辞職に関して、飲食店の名称や個人の名前等は公表しないように確認し新井議員は了承した。また、金子代表、新井議員に対し山田議員の辞職について新飯能に真実を載せるよう申し入れを行った。

 ▽加藤由貴夫議員(みどりの会)=先ほど山田議員が一身上の都合で辞職された。さて、山田議員の公職選挙法に抵触するお見舞金、そして、飲酒の後に自転車を押して帰ったということであるが、本当にその通りだとは分からない。

 さらに、一身上の都合とは何か。お元気にお見受けしたが、詳しく説明して頂きたい。法令違反に対して辞職で済む問題ではないと考える。この問題は公職選挙法違反であり、また、道路交通法等、2つの件について議長は警察等に告発すべきと考えるが、議長の見解を伺う。

 ▽平沼議長=確認のため休憩する。(再開後)山田氏の2月22日の自らの行動について自ら説明があった。自粛期間中の自らの行動の甘さや公職選挙法違反のおそれ、飲酒後に自転車を転がして帰る行為が明らかになったことから、自ら辞職されたもの。また、警察等への告発については、本件の重要性を鑑み、適切に対応する。

 ▽加涌弘貴議員(飯能みらい)=私にとってやむにやまれぬことがあったので議長に見解を伺う。冒頭の野田議員の議事進行の中で、共産党が発行している新飯能において野口副議長をはじめ市議会議員6人がランチミーティングで濃厚接触になって市議会を欠席、ふざけるな、という記事が掲載されたとのことだった。私も確認させて頂いた。このことは由々しき問題だと思っている。

 市内でも多くの方が不幸にして感染しご苦労されておられる中で、コロナ感染者並びに濃厚接触者に対する偏見を生む差別的な内容。議会としても許すべきではない。このようなことを掲載して、濃厚接触者を陥れる行為は野口副議長をはじめ6名の名誉のみならず、コロナ感染者全体に対する基本的人権への配慮に欠けた行為と言わざるを得ない。

 市議会として記事の取り消しと陳謝を求めるべきと思うが議長の見解を伺う。飯能市議会もきょうが最終日であり、また、4月には新たな選良の議員が生まれる。ここでしっかりとけじめをつけて頂かなければならないと思う。議長の対処を心から期待したい。見解を伺う。

 ▽平沼議長=確認のため休憩する。(再開後)加涌議員の議事進行にお答えする。日本共産党の金子代表が当該記事は問題であるとして、来週までに発行する新飯能に取り消しと謝罪を掲載することを約束した。

        ◇

 6期の任期満了を迎えることなく議員辞職した山田氏は、全議員への説明や取材に対し、「懇意にしている知人が入院したため、その家族が経営する飲食店へ見舞金を持参し、お茶代わりにとアルコール等の提供を受けた。店に9時過ぎまでいたのは事実」としており、取材に対し「私の認識が甘く、皆さんに迷惑をかけてしまった。党とも相談してすみやかに辞職すべきと判断した」などと述べ、4月に控えた市議選を含め「今後のことはまだ何も考えられない」などとコメントした。