休暇村奥武蔵「にしかわ館」 家具や壁材、西川材の存在感前面に
飯能市吾野のリゾート施設「休暇村奥武蔵」(合田忠功支配人)が建設を進めていた新館「にしかわ館」が完成し、10日オープンした。同館は地上4階建てで延床面積1561平方メートル。山里の風景を望むバルコニー付きの客室23室を設け、建物の名前の通り、壁材や家具に地元名産の西川材をふんだんに活用した。中でもテーブルや椅子などの家具は、軟質のスギ材を家具に適した強度に高める「圧密加工」と成形合板技術を用いた国内唯一の製法で仕上げられ、西川材の新たな需要の提案にも一役買っている。新館の完成に伴い既存施設は「あがの館」と名付けられ、こちらは大浴場、レストランをリニューアル。やはり木のぬくもりを重視し、大浴場の露天風呂にヒノキ風呂を新設するなど西川材を多用、レストランでは厳選した地元食材を使ったビュッフェや会席料理を堪能できる。
にしかわ館の完成により、客室数は従来の27室から50室へとほぼ倍増。新館の客室には全てバルコニーと大きな窓が付き、各室から自然に恵まれた吾野の風景を一望できる。1階「和モダン・遊」、2階「和モダン・雅」、3階「TENDO STYLE(テンドウスタイル)森」、4階「スタイリッシュ・宙(そら)」と階ごとにテーマを設け、それぞれに特徴を持たせた。
このうち、3階「TENDO STYLE森」は、家具や壁材に地元の西川材を用い、その魅力を肌で感じられる空間としてデザイン。本来、軟質のスギ材は家具には不向きとされていたが、スギ材を圧縮し何層にも重ねて強度を高め、自在に成形することのできる圧密加工と成形合板技術を有する山形県天童市の天童木工が西川材を使ってテーブルや椅子などの家具を製造。国内唯一の製法として、西川材の新たな活用を提案するコンセプトルームとして存在感を示している。
1階の「和モダン・遊」は、和の風合いを感じさせる室内のベッドルームと、室内とほぼ同じ広さを持つ屋外のアウトドアリビングが一体化。部屋ごとにハンモックや木陰のベンチなど異なるしつらえが施され、光、風、木陰、せせらぎなど四季折々の魅力を感じながらくつろげる空間を演出。
また、最上階客室の4階「スタイリッシュ・宙」には寝転んで星が見えるようオープンルーフのバルコニーを採用している。
新館オープンに先立って行われた既存施設「あがの館」のリニューアルでは、大浴場の露店風呂に樹齢200年のヒノキを使った一人用露天風呂を新設し庭園部分を拡大したほか、館内の至る所に西川材を多用し、木のぬくもりを前面に際立たせた。テーブルや椅子に西川材を使用したレストランでは、施設の隣を流れる高麗川のアユや契約畑のジャガイモなど、地元食材を使った和食ビュッフェや会席料理を味わえる。
一般財団法人休暇村協会が運営する休暇村奥武蔵は、平成25年7月、全国37番目の休暇村として旧奥武蔵あじさい館を活用し開業。都心から約50キロに位置しながら豊かな自然に恵まれた里山リゾートとして人気を集め、年間約2万人が利用している。
新館オープンに先立って開かれた記者発表会には、合田支配人、西川地区木材業組合の本橋勝組合長、西川材家具を製造した天童木工の西塚直臣常務が出席。新館の概要をはじめ、西川材活用の経過などが説明された。
合田支配人は「おかげさまで休暇村奥武蔵は平成25年7月の開業以来85%以上の高い稼働率を実現している。新館建設やリニューアルにあたり、その土地ならではの魅力をお客様に提供するため、家具にも良質な地元の西川材を使用したいとの思いが強くあった」と語り、「国内唯一の加工技術を持つ天童木工で家具作りの工程を見学し、全国各地の木材が家具となり里帰りする姿を目の当たりにした。良質な木材と成形合板技術のコラボレーション、木目の美しさや肌触りを感じて頂けたら」。
地元の木材関係者を代表して、西川地区木材業組合の本橋組合長は「江戸から見て西の方角から筏で運ばれてくる優良材として西川材と呼ばれるようになった」との西川材の由来を説明。「ヒノキ風呂には西川材の中でも最もきめの細かい油気の強い材を使って頂き、最高の肌触りが感じられるのでは。そしてスギで作られた家具は、白太(しらた)と赤身の色合いがとても素晴らしく、木の特性を最大限活かし、コンセプトに沿って西川材の変化を楽しむことができる。新館の名称をにしかわ館と名付けて頂き、地元としても大変ありがたく思っている」。
また、家具製造を手掛けた天童木工の西塚常務は「平成24年頃から、有り余るほどの国産針葉樹、スギ・ヒノキ・カラマツ等を使って家具作りができないかと研究を続けてきた。特にスギは強度が弱く家具作りには不向きだったが、これを圧縮することで、ブナやナラに匹敵する強度に加工することができた」と振り返り、「今回、家具に使用した西川材は80年~100年のスギ。丸太を製材した時に吉野杉に勝るとも劣らない素晴らしい材と感じた。地域で育った材を使い、地域へお返しすることに価値がある。このように宿泊施設へ家具を提供することができ、我々も喜ばしい」と語った。
休暇村奥武蔵の宿泊料金は1人1泊2食付で、にしかわ館が1万4500円から、あがの館が1万2000円から。大浴場は午前11時から午後3時(受付は同2時半)まで日帰り入浴が可能、料金は大人800円、4歳以上400円。吾野駅下車、送迎バス5分。
問い合わせは、978・2888へ。