野外展の作品盗まれる 「信じられない行為」と関係者

盗まれた作品の一つ

 飯能市の名栗湖畔や古民家脇などを展示場に開かれている「2018名栗湖国際野外美術展」(同美術展実行委員会主催)会場から、展示中の作品が盗まれていたことが分かった。実行委(柏木正之委員長)は16日、飯能署に被害届けを提出した。同美術展については昨年も同様の被害を受けている。

 名栗湖国際野外美術展は、同湖畔や湖面、周辺道路沿いの空き地、森林内、民家脇の敷地などを立体アートの展示場所として平成2年にスタートした県内でも数少ない野外美術展。

 地元名栗地区在住の彫刻家で、名栗湖畔で活動する認定NPO法人名栗カヌー工房の理事長職にある山田直行さん(69)らが中心メンバーとなって立ち上げ、今回を含め14回開かれている。今年は、国内を中心にフランス人作家2人を含む60人の現代アートや木工作家らが出品、4月28日に開幕した。

 盗難被害に遭った作品は、ダム堤体近く、芝生が敷き詰められた緑地に展示されていた、木彫作品の「木怒哀楽」。地元で木工作業所「Genクラフト」を営む佐野元一さん(62)が出品した。

 作品は、直径約40センチ、高さ50センチほどの四つのスギ丸太の表面に、それぞれ「喜」「怒」「哀」「楽」の人の表情を彫ったもの。制作期間は延べ2週間。素材が木材なので、作品タイトルを「木怒哀楽」と付け、5月1日現地に搬入した。

 展示場から作品が消えているのが確認されたのは16日午前8時頃。4点で作品を構成するうちの一つを残して3点が無くなっているのを出勤途中のカヌー工房のスタッフが発見、周辺や湖を一周して捜しても見つからなかったため、盗難されたものと判断、その日のうちに飯能署へ通報した。

 被害に遭ったのは、喜怒哀楽のうちの喜、怒、楽の表情が彫られていた3作品。悲しい顔をしている作品については、芝生の上に残されていた。作品1点の重量は約30キログラムと重く、転がすと芝生が転圧されて跡が残るが、周囲に転がしたような形跡はなかった。

 作品を制作した佐野さんは、「まさかと思った。一体、誰がなんのために持っていったのか。返してもらえるなら、返して欲しい」と犯行に及んだ人物に呼び掛ける。佐野さんは、美術展が閉幕するまでに時間があるため、盗難されたものと同じ作品を期間内に作り上げ、再度展示するという。

 山田さんは、「信じられない行為。作家が精魂込めて制作した作品である。それを盗むとは。理解に苦しむ」と憤りを隠せない。同美術展については、昨年も名栗湖畔会場から展示中の作品が盗まれる被害を受けている。その作品を制作した作家は今年も出品したが、作品と付近の構造物とをワイヤーで接続し、その場から移動できないよう自衛策を講じている。

 名栗湖国際野外美術展は、名栗湖左岸側の空きスペースやカヌー工房内、ダム堤体周辺、武州一揆壁面がある名栗湖入口付近から県道の対岸を鳥居観音方向に延びる市道(こかげの小径)沿いの空き地と古民家脇などを展示会場に今月27日まで開かれている。