まちから山へ、地域つなぐ 第13回「飯能ひな飾り展」
もうすぐひな祭り。観光客や市民がパンフレットを手に市内各所に展示されたひな飾りを巡る姿は、飯能の春の風物詩として定着しつつある。今年で13回目を迎えた「飯能ひな飾り展」は3月11日まで開催中。かつて林業や絹織物で栄えた飯能の歴史を紐解き、市街地と山間地域をつないでいくような行事を──。そんな思いから生まれた催しは、ひな飾りという多くの商店や民家が所有する素材を生かし、誰もが気軽に参加できる行事として回を重ねるごとに成長。今年は商店や事業所、民家、公共施設など132か所に工夫を凝らしたひな飾りが飾られ、市内に春の訪れを告げている。
我が子の健康や将来の幸せを願うひな飾りは、多くの家庭が揃え、子どもが成長した後も大切に保管している場合が多い。また、商店の蔵などには古い雛人形も眠っていることから、「こうしたひな飾りをみんなで展示し、まちの活性化や新たな魅力づくりにつなげよう」とのアイデアで同展はスタート。当初は仲間同士の手作りのイベントとして商店街周辺の一部の参加から始まり、年々、参加会場を増やしていった。
今では行政センターなどの公共施設も多数参加し、官民一体で行事を盛り上げている。同展を主催する実行委員会の井上七恵委員長は「ひなを飾ることで地域を結び、まちの活性化に貢献するといった趣旨に賛同して下さる人々の輪が広がり、13回目を迎えることができた。良い形で伝統になりつつある」と感謝する。
メイン会場の店蔵絹甚(本町)は、明治30年代後半に建てられ、かつて市を代表する産業だった絹関連の買い継ぎを営んでいた。平成19年度に市の文化財に指定され、土蔵造りの建物の復原修理が行われ、飯能の歴史を今に伝えている。
会場内では、御殿雛などの豪華な段飾りを主役に、「飯能布塾」による手作りのつるし飾りが花を添える。
飯能布塾は絹甚の活用を図る絹甚運営委員会の企画事業として始まったボランティアグループで、今では30人を超える人々が集まり、古絹などの提供を受け、ひな飾り展に合わせてつるし飾りを制作。
さるぼぼ、椿、桃、菊、鳩、牡丹、石榴、唐辛子、飯能ツツジなど豊富な種類のつるし飾りのほか、子どもたちの人生が丸い物となるようにとの願いを込めた「御殿まり」、端切れなど100枚の布から作った着物を子どもに着せると丈夫に育つという金沢の風習をもとに制作した「百徳着物」なども手掛けている。
市内では同展に合わせた協賛イベントも多数行われており、飯能駅北口周辺の商店街に目をやると、昨年3月に他界した地元のイラストレーター・岡部貴聡さんが生前描いた大型フラッグがはためき、大通り商店街には毎年恒例となっているひな祭りをテーマにした川柳を描いた「行灯(あんどん)」が設置され、訪れる人々を歓迎している。
問い合わせは、飯能商工会議所974・3111へ。