米国のカーネギーホールで演奏 飯能市在住のコカリナ奏者・黒坂黒太郎さんら

米国でコカリナの演奏を披露する(右から)黒坂さん、双木さん、矢口さん

 飯能市稲荷町在住で、木製の笛「コカリナ」奏者の黒坂黒太郎さん(68)が率いる日本コカリナアンサンブルが、音楽家憧れの殿堂・米国のカーネギーホールで現地時間の12日にコンサートを行う。演奏は、新国立競技場の建設のために伐採された木や、東日本大震災の津波でたった一本生き残った「奇跡の一本松」から出来たコカリナを使用する。また、全員が同松を素材に仕立てた布を身に着けて演奏する。

 コカリナは、もともと東欧ハンガリーの露店で売られていた民族楽器だったが、今から20年程前、黒坂さんが日本に紹介し、黒坂さんと日本の木工家によって様々な改良が加えられ、高度な楽器として進化した。コカリナの最大の特徴は、木だけで出来ているということ。様々な木から製作することができ、それぞれの木がそれぞれに異なる音色を出す。現在、コカリナの愛好家は全国で10万人ほどいるという。

 コンサートには日本から約150人のコカリナ合奏団をはじめ、黒坂さんの妻で歌手の矢口周美さん、息子で和太鼓奏者の黒坂周吾さん、飯能市原町在住の双木正代さんらが日本から参加するほか、ニューヨーク在住の日本人学校の児童約125人も一緒に登場し、「命」をテーマにクラシックや日米の伝統的なフォークソングを織り交ぜた楽曲などを演奏する。

 コンサートで身に着ける「奇跡の一本松から出来た布」は、平成25年度「間伐・間伐材利用コンクール」で、林野庁長官賞(最優秀賞)を受賞した「木を布にする技術」を持つ、大阪府阪南市の繊維メーカー「和紙の布」とのコラボで実現。東日本大震災の津波でたった一本残った陸前高田市の「奇跡の一本松」は保存するため、中をくり抜き鉄柱を通し、再建された。くり抜いたときに出た木くず(チップ)は、陸前高田市に大量に保存され、そのチップから布が完成した。

 これは、同市井上にあるフォレスト萩原の紹介によるもの。黒坂さんと同社は、国立競技場の建て替えで伐採される木々をコカリナとしてよみがえらせるというプロジェクトを通じて親交があった。

 黒坂さんは「萩原さんとの出会いのお陰で、奇跡の一本松から出来た衣装を身に付け演奏することができ、感謝している。今回のコンサートは“命”がテーマ。国立競技場の建て替えのために伐採された木や奇跡の一本松から出来たコカリナ、そして布は、命のよみがえり。アメリカの皆さんに“日本の木の音の素晴らしさ”と共に、“木を加工する技術の素晴らしさ”を知って頂こうと思う」と話している。

 コンサートのチケット代売上の一部は、難病の一つに指定されているALS(筋萎縮性側索硬化症)協会グレーター・ニューヨーク支部に寄付する。