バスと乗用車の事故想定 多数傷病者対応訓練
「吾野地内の国道299号線で観光バスと乗用車が正面衝突し、多数の死傷者が出た」との想定のもと、埼玉西部消防局飯能日高消防署、飯能警察署、埼玉医科大学国際医療センター、飯能市、日高市が参加し「多数傷病者対応訓練」が日高市山根の埼玉医大国際医療センター敷地内で行われた。
今回の訓練では前述の想定以外のシナリオはなく、本番同様に現場に出動した関係者が判断し対処する「ブラインド型訓練」として行われ、100人を超える関係者が参加し、計50人の負傷者をバスや乗用車から搬出し、負傷者を重症度、緊急度によって分類するトリアージ、エアテントでの応急手当、救急搬送から病院での受け入れなどに取り組んだ。
訓練を企画した関係者によると、従来の訓練は分刻みの時系列で内容が決められており、参加者全員にあらかじめ周知されていたため、「訓練のための訓練」に陥りやすく、「災害時のための訓練」になりにくい現状にあったという。
そこで今回の訓練は、一部の関係者以外には一切公開しないブラインド型の訓練として実施。実際の災害現場と同様にその場で情報を収集し、判断して行動。課題を見つけて改善していくことで、災害時への備えを強めることを目的とした。
訓練会場には実際にバスとミニバンが置かれ、車内には負傷者役の関係者やダミー人形を配置。通報を受け吾野分署から消防・救急隊員が現場に駆けつけた所から訓練が始まった。
飯能警察署、飯能日高消防署、日高分署からも車両が駆けつける中、隊員たちはバスの後部非常用ドアから車内に入り、乗客の様子を確認。歩行可能な負傷者から車外に誘導するとともに、動くことのできない負傷者の搬出準備を整えた。
やがて医師や看護師らも到着し、多数の傷病者が発生した際、色分けされたタグをつけ救命の順序を決めるトリアージを経て、エアテントを設営して応急手当を行いながら、一刻も早い処置をすべき重傷者から順に救急車で国際医療センターへ搬送した。
負傷者役を務めた参加者からは「負傷者を車外に運び出すまでにかなりの時間を要することを実感した」「軽度の負傷者でも容態が急変する可能性もある。そうした面でのケアが足りなかったのでは」などの感想が寄せられた。
また、訓練後には「事故に遭った観光バスはハイジャックされたもの。運転手と犯人がもみ合っている際に乗用車と衝突、運転手、犯人はいずれも死亡した」といった詳細が明かされた。
講評を行った飯能日高消防署の渡辺和義署長は「多数の傷病者が出る災害には、一つの組織や機関ではとても対応できない。関係機関と相互に協力しながら有意義な訓練を行うことができた。引き続き災害対応に万全を尽くしたい」と話している。