公共交通のあり方考える 「市民も協力し維持を」

車イス、高齢者等が利用しづらい「天覧山入口」バス停

 「行政任せはだめ、住民も出来るだけ協力しないと」。出前講座「地域公共交通について」がこのほど、同市双柳の総合福祉センターで開かれ、用意された会場をほぼ満員にするほどの市民が集まり、切実な訴え、質問が相次いだ。

 山間5地区や精明地区をはじめ、多くの飯能市民にとって足の確保は切実な問題になっている。この講座は、同市地域交通対策協議会委員で、同市小瀬戸に住む石井英子さんが企画。講師の市職員に、市内の公共交通の現況や対策を説明。参加した市民が、現状報告や要望を行い、参加者全員で今後の公共交通のあり方を考えた。

 はじめに、市交通政策室長の佐野敬子氏は、「車に乗れなくなれば、バス利用を考えるという話をよく聞くが、今から定期的に利用しないとなくなってしまいます。講座をきっかけに公共交通について考えてほしい」とあいさつ。

 続いて、同室主査の石井利和氏が、高齢者の移動手段としての観点を中心に、市内の公共交通の現況と、市の取組について説明した。

 現在、市内には31系統のバスが運行されているが、一部の路線を除き多くの路線が赤字運行。国際興業バスの運行維持のために、市が6300万円の補助金を支出している事、同社と市が平成31年度までの運行継続を協定しているが、32年度以降の協定はまだ結ばれていない事などを解説。さらに、西武とJR八高線の鉄道も、17年度から26年度までの10年間で、市内8駅中、西武の東飯能駅と元加治駅が微増したほかは、他の6駅で乗降客数が減少していることが報告された。中でも山間部の東吾野駅から正丸駅の4駅は20%から40%減少。

 一方、市の対策として、市内11コースでの総合福祉センター送迎バスの運行、福祉タクシー利用料金の助成、市社会福祉協による車イスで搭乗可能な福祉車両の貸与、飯能駅を起点にした国際興業バス路線に大人100円区間の試験的導入、利用促進を図るため「飯能市バスルートマップ」1万部の作成・配布、バス路線の一部見直し等の取組や諸施策を紹介し、積極的利用を呼び掛けた。

その後、市民が日頃抱いている思いや、要望を出し合い、市の担当者も含めた参加者全員で今後の公共交通のあり方を考えた。

 石井さんが口火を切り、福祉センター送迎バスを10年以上前から利用し、「正丸や湯の沢まで通じ巡回で毎日走っている。買い物などにも結構使える」と利便性を説明。しかし、「このバスの時刻表どころか、存在を知らない人も多くもったいない」と嘆いた。

 また、西武飯能ペペ食鮮市などのスーパーが、午前中に買った品物を午後自宅に届けてくれるサービスをしていることも紹介。重い荷物を持つことが困難になっているお年寄りの手助けになることを説明した。

 名栗から参加した男性は、「国際興業バスがなくなったら死活問題だが、企業は利益が出なければ廃止にする。行政任せにせず、地域に住む各家庭で乗っても乗らなくても年間2000円分くらいの回数券を買うなど、協力しないと解決しない」と訴えた。

 さらに、飯能に転居して間もないという女性は、車イスの娘さんが、市立図書館(山手町)を利用する場合、最寄り停留所は「天覧山入口」だが、車の通行が多い割に道幅が狭く、車イスに限らず乗降が難しいことを訴え改善を要望した。

 第一小学校の歩道側のこの停留所は、児童の安全確保のためか、わずかな隙間を開けただけの間隔で高い鉄柵が設置されていて、車イス、高齢者に限らず乗り降りしづらい。同政策室は、業者や関係各方面に情報や要望を上げ、この歩道側の柵などについても調べると話した。

 また、この事とは別に、市民からの要望や市議会での一般質問を受け、平成31年の市道工事完了後、西武飯能日高方面の路線バスの一部のルートを西中学校、第一小学校付近に迂回させることも検討されており、市立図書館へのアクセス向上につながる可能性があるという。

 そのほか、毎朝駅のロータリーを、通勤通学の家族を送りに来た車が殺到しバス運行の障害になっているという話に対して、付近に住む住民からは、数が多く危険を感じるという訴えや、この通勤通学者をバス利用者にできないか、という問い掛けが行われた。そのほか、老朽化もあり取り壊されるバスの停留所が増え、雨や日差しが熱いときバス待ちも大変になっていることなど、市民それぞれが公共交通について日頃抱える思いを出し合った。

 石井さんは、「私が引っ越したときは、バス便も多く便利だったが、本数がすっかり減り最近10年でどこも利用客がめっきり減っている。免許を返納したら乗るからいいではアウト。今から取り組まないと」と、危機感を語った。

 講座の中でも、免許の返納を考えている人は少なく、逆に免許返納後の不安を口にする人が多く、バス利用者増加を実現していくことの難しさが浮き彫りに。

 市交通政策室などでは、公共交通充実のために様々な施策を講じるとともに、業者等の情報を把握しており、問い合わせは同室973・2126