落合西光寺双盤念仏 県文化財指定後初のお披露目
飯能市落合にある西光寺(加藤秀明住職)仏堂の「薬師堂」で12日、春季例大祭が行われ、「落合西光寺双盤念仏」が保存会(小島正義会長)により奉納された。西光寺の檀家で代々伝承されているもので、先月には県の無形民俗文化財に指定されており、指定後初のお披露目となった。
双盤念仏は、堂内の本尊に向かって中央に据えられた大太鼓、その後方には枠台につるされた4つの鉦を打ち鳴らし、特殊な節回しで「南無阿弥陀仏」の六字名号を唱えるもので、もともとは、僧侶が唱える「引声念仏(いんぜいねんぶつ)」から派生したものといわれている。「引声念仏」は、長く伸ばす曲調をつけ「南無阿弥陀仏」の念仏を唱えるもの。
文化文政期から幕末に埼玉県西部や東京都内に宗派を超えて流行し、各地の寺院で盛んに行われていたが、大正から昭和にかけて急速に下火となって伝承が絶えてしまったところが多く、現在埼玉県内で伝承されているのは数か所のみという。
落合の双盤念仏は浅草寺から伝えられた浅草流で、文化文政期に始まるといわれている。戦争中の金属供出によりしばらく中断していたが、地区内で再活動の声が高まり、昭和52年に復活。現在メンバーは13人ほどで、毎月2の付く日に西光寺の本堂に集まり1時間半練習している。
毎年4月12日、10月12日の縁日をはじめ、西光寺でも8月14日の盆の施食会と大晦日の夜に奉納されている。
同62年度に飯能市指定無形民俗文化財に、平成21年度には埼玉県選択無形民俗文化財に指定されており、このほど県の無形民俗文化財の指定を受けた。
12日の春季例大祭では、保存会による奉納の後、加藤住職らが経を唱える中、集まった人たちは一人ずつ焼香し、手を合わせた。
小島会長は「県からお墨付きをもらい嬉しくもあるが、同時に一層の責任感も感じている。後世に伝統を残していくため、後継者の育成に励みたい」と話している。