落合双盤念仏が県無形民俗文化財 江戸末期から続く民俗芸能
枠台に吊るした双盤と呼ばれる鉦を打ち鳴らしながら、独特の節回しで念仏を唱える、飯能市落合にある西光寺(加藤秀明住職)の檀家で代々伝承されている「落合西光寺双盤念仏」が、県の無形民俗文化財に指定された。
県文化財保護審議会の答申を受け、県教育委員会が23日の会合で決定した。同念仏については、昭和62年度に市の無形民俗文化財、平成21年度には県の選択無形民俗文化財指定されている。
双盤念仏は、直径約40センチの鉦と太鼓を打ちながら、特殊な節を付けて「南無阿弥陀仏」と唱える芸能。もともとは、僧侶が唱える「引声念仏」(いんぜいねんぶつ。曲節を付けて阿弥陀仏を唱える)から派生したものといわれている。
東京の多摩地域や埼玉県西部地域などを中心に伝えられ、明治から大正時代にかけ、埼玉県内では流行したという。
飯能市落合の西光寺双盤念仏の流派は、浅草寺から伝えられた浅草流。西光寺の七世住職が江戸時代末期、町人文化が栄えた文化文政期に、この地にもたらしたといわれる。
金属供出によって太平洋戦争中に中断したものの、地区内で再活動の機運が高まった昭和52年、念仏伝承者である古老の協力を得て、悲願の復活を果たした。
檀家が保存会(小島正義会長)を組織、毎月「二の付く日」の夜間、西光寺に集まり、先人の労苦を無にしてはと演奏技術の向上、伝承に励む。会員は13、14人で平均年齢は60歳代。口伝えのため、習得は困難を極め、完全に身に着けるには5年近く要するとも。
そうした技術の披露の場が、「落合の薬師様」として広く信仰されている西光寺仏堂の「薬師堂(瑠璃殿)」(落合276)の縁日。4月12日、10月12日の年2回開かれる縁日当日は、加治丘陵裾野に鎮座する堂内での念仏と鉦と太鼓の激しい打音が四方八方に響き渡り、聴衆を圧倒する。
構成は太鼓1人に鉦4人。本尊の薬師如来に向かって中央に太鼓が据えられ、後方左側から順に、四つの鉦が並ぶ。
江戸時代末期から、地域で脈々と受け継がれてきた県内でも数少ない民俗芸能の落合双盤念仏。県教委は「戦中の中断を経ながらも現在まで伝承され、高いレベルでの演奏技術を維持している双盤念仏の数少ない例として非常に貴重」と評価する。
文化財指定書の交付式は今月29日県庁で。保存会は内沼博史県議、地元中元太市議とともにその後、4月3日午後、飯能市役所に大久保勝市長を訪ね、喜びの県無形民俗文化財指定を報告する予定だ。
飯能市内での県指定無形民俗文化財は、下名栗諏訪神社の獅子舞と今回の落合双盤念仏とで2例目。
会長の小島さん(67)は「ますます責任が重くなったが、技術を絶やさぬよう、さらに努力していきたい」と抱負を話している。来月12日の薬師堂縁日は、指定後最初の地域住民お披露目、欣喜の〝舞台〟。