日本茶AWARDでプラチナ賞 備前屋の「紫にほふ」
日高市高萩の狭山茶専門店「備前屋」(清水敬一郎社長)が手掛けた狭山微発酵茶「紫にほふPlatinum釜炒り製『ふくみどり』」が、NPO法人日本茶インストラクター協会(東京港区)などが主催する「日本茶AWARD(アワード)2016」香りのお茶部門でプラチナ賞を受賞した。
入賞茶は、埼玉品種の「ふくみどり」を手摘みし、茶葉を広げて干す「萎凋(いちょう)」と呼ばれる工程などを経て茶葉の持つ香りを最大限に引き出したもの。備前屋は昨年、出品茶が審査員奨励賞を受賞しており、今回、さらにステップアップ。
清水社長夫妻が日高市役所を訪れ谷ケ﨑照雄市長に受賞を報告し、受賞した茶を試飲した谷ケ﨑市長は「上品な味と香り」と太鼓判を押した。
日本茶AWARDは、消費者に支持される魅力的で多様な日本茶を発掘・提供していくことを目的に、「うまいお茶」「香りのお茶」の2部門で評価。
全国の茶の生産・製造・流通関係者などから計391点が出品され、9月に一次、二次審査、12月2~4日には渋谷ヒカリエでプラチナ賞以上の受賞茶20点を対象に一般消費者の投票で大賞・準大賞などを決める「TOKYO TEA PARTY」が開かれた。
備前屋が出品した「紫にほふ」は、茶葉を広げて天日に干す萎凋工程や台湾茶に使用される炒青(さっせい)機を使って製茶段階で適度に発酵を促し、豊かな香りを引き出したもの。
その上品な香りが審査員に高く評価され、9月の一次、二次審査でプラチナ賞に選出。三次審査では入賞こそ逃したものの、試飲した多くの消費者から好評を得た。
昨年は埼玉品種の「ゆめわかば」を使った微発酵茶で審査員奨励賞を受賞。今回はやはり埼玉品種の「ふくみどり」を用い、昨年の成績をさらに上回った。
清水社長は今年4月、発酵茶の製造に優れている台湾で製茶の研修を受け、茶葉の香りを引き出す萎凋を効果的に促す方法を習得。自社で摘んだ新茶で実践したところ、成果がすぐに表れたという。
「今年は茶葉の出来も良かったが、萎凋の工程をさらに充実させたことでより良い製品に仕上がった。製茶の段階で柑橘系の香りが漂い、これはいけると確信した」と振り返る。
「紫にほふ」の商品名は、かつて武蔵野で江戸紫の原料として盛んに栽培された紫草に由来。武蔵野を代表する色と香りを持つ紫草の名にあやかり、その年に出来た一番良い茶葉を使い、品種ごとに色や香り、味の良さを最も引き出す製法で仕上げた。
入賞した「ふくみどり」に加え、「ゆめわかば」「やぶきた」と品種別に商品化している。
備前屋は、県西部の製造工場から仕入れた荒茶を自社工場で仕上げ、品種ごとの特色や旨みを引き出しているほか、自ら茶園を経営し手摘み茶の栽培・生産に取り組んでいる。
紫外線や高温などのストレスを与えると自己防衛のために強い香気を放つ茶葉の特性を生かし、茶葉を広げて干す萎凋工程にこだわり、香りを引き出す工夫を続けている。
今年5月に出版された飯田辰彦著『日本茶の「本流」』(鉱脈社)でもその取り組みが大きく紹介された。
市役所で受賞報告を受けた谷ケ﨑市長は「地元で栽培した埼玉品種の茶葉を使い、全国で高い評価を受けたことは大変素晴らしい」と称え、入賞茶を試飲し「とても上品な味と香りを楽しめる」と笑顔を見せた。