猪苗代湖のアクティビティに使用 西川材製のセイリングカヤック 名栗カヌー工房が2艇製作

工房でカヌー製作する山田さん(右)と工房長の町田和也さん

 飯能市の名栗湖畔で西川材を使用して木製カヌーや家具などを製作している認定NPO法人名栗カヌー工房(山田直行理事長)が、風を受けて自走する「セイリングカヤック」を2艇手作りした。スギ、ヒノキの西川材だけで手掛けたこのセイリングカヤックは、都内の企業が行う福島県猪苗代湖でのアウトドア事業に使われるという。

 木製のカナディアンカヌーなどを手作りする名栗カヌー工房。施設名称をカヌー工房としているが、ファクトリーが製作するのはそれだけにとどまらない。ヨット、カヤック、シーカヤック、カヌヨット、ミニクルーザー、和船。顧客の要望に応じて、小型船艇ならどんなスタイルのものでも卓越した技術で作り出す。

 セイリングカヤックは、工房の持つ国内でもトップクラスという技術力の高さと、数々の各種船艇の製作実績を聞きつけた東京都内の企業からの発注。セイリングカヤックは、アクティビティフィールドとして有名な福島県猪苗代湖でのアウトドア体験に使用されるという。

 昨年6月にオーダーを受けた工房は、数度の打ち合わせ後、12月に作業を開始。設計を山田さん(74)が担当し、製作はオーダーが同仕様2艇だったことから、山田さん以下、スタッフで取り掛かった。

 材料は地元のスギとヒノキ。幅3センチメートル、長さ4メートルの細長いスギ板を型に沿って張り合わせ、その上に強度と耐水性を高めるためのFRP樹脂を全体に塗って完成させる。使用したスギ板は1艇あたり200枚以上となった。

 4月に完成したセイリングカヤックは、全長6メートルの5人乗り。船体の両脇には、カヤックの本体を一回りサイズダウンしたような長さ4メートルの取り外し可能なアウトリガーと呼ばれる浮力体が付いた。

アウトリガーが装着されることで、カヤックの安定が増し、より直進しやすくなる。しかし、直進性が高まることで方向転換などが難しくなるため、船尾にカヤックの進行方向を操作する舵が取り付けられた。この舵と本体との設置部分については、浅瀬に乗り上げたり、岩に衝突したりした際の衝撃を和らげるような工夫も施された。

 定員は本体に3人、本体とアウトリガーを接続するデッキ部分にそれぞれ1人ずつ座ることができる。全幅はアウトリガー含めて3メートル。猪苗代湖の風を受ける帆の高さは4メートルで、帆布も工業用ミシンで縫って仕上げられた。

 これまで50艇を超える数のカヤックを製作しているという山田さんだが、今回のセイリングカヤックについては「5人乗った際、水面から3分の1程度、沈むようカヤックの浮力計算をすることに少し苦労しました。スタッフが協力して作業し、無事、納品することができて本当に良かった」と話している。

 同工房では、カヌー製作とともに、名栗湖でのカヌー体験も行っている。

 問い合わせは、認定NPO法人名栗カヌー工房(979・1117)へ。