宮沢ため池ハザードマップ 決壊で最大水深5メートル以上 15分後には八高線水没
飯能市には、決壊した場合の浸水区域に家屋や公共施設があり、人的被害を与えるおそれのある農業用ため池として、「宮沢ため池」と「鯉ヶ久保池」の二つがあるが、市は大地震などでこのため池が決壊したケースを想定したハザードマップを作成、公表した。
それによると、宮沢ため池が決壊したとすると、堤体直下一帯は5メートル以上の深さで浸水し、流出した水は数分後には市界を越え、10~15分後には日高市内のJR八高線付近に到達、線路が深さ2メートル以上にわたって水没することが分かった。
農業用ため池は、農業用水の確保が目的だが、地域住民の憩いの場や雨水を一時的に貯留する洪水の調整機能も併せ持つ。市内には、宮沢地区の「宮沢ため池」(宮沢湖)と「鯉ヶ久保池」(芦苅場地区飯能ゴルフクラブ内)の二つがある。
平成25年、近年の自然災害による農業用ため池の被災を受け、国はため池の一斉点検を実施する旨を自治体に通達。28年には防災重点ため池のハザードマップを作成し、住民へ公表するようにとの指示も出した。
その後、令和元年7月に「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」が施行。市内では、宮沢ため池と鯉ヶ久保池が防災重点ため池として指定された。
防災重点ため池は「決壊した場合の浸水区域に家屋や公共施設等が存在し、人的被害を与えるおそれのあるため池」を指す。この指定を受けた市は、耐震診断として両池でボーリング調査、地盤土質試験、地質解析調査を行い、堤体の安全計算を実施。
その結果、両堤体は国の示す安全率をクリアし、安全性が確保されていることを確認した。
今回、市ホームページで公表したハザードマップは、万が一、大地震や大雨などの最も不利な条件が重なり、両ため池の堤体が決壊したというケースを想定し、シミュレーションを行い、浸水が想定される最大の範囲を示したもの。
浸水した時の最大水深を水深ごとに色分けして表示し、それぞれの地点にどの位の時間で流れが到達するかを示した到達時間を地図上に落とした。
宮沢ため池の堤高は19メートルで、総貯水量は87万9000立方メートル(25メートルプール約1465杯分)、もう一方の鯉ヶ久保池は堤高4メートルで、総貯水量は3万3000立方メートル(25メートルプール約55杯分)。
シミュレーションによると、宮沢ため池が決壊すると堤体直下は最も深いところで5メートル以上水没し、日高市との行政界まで2メートル以上5メートル未満で浸水する。
流出した水は、その後JR八高線と並行する形で北東方向へ流れ出し、10分後には県道飯能寄居線バイパスを水没させ、およそ15分後にはJR八高線、30~40分後にはJR川越線を通過し、決壊から約1時間後には武蔵高萩駅北東の国道407号バイパス直前まで迫ることが分かった。
宮沢ため池から国道407号バイパスまでの距離は直線で約5キロメートル。流出した水は帯状になって流れ、バイパス直前では最も深いところで2メートル以上5メートル未満浸水するというシミュレーションになった。
一方、鯉ヶ久保池については堤体が決壊したと想定すると、北東方向の南小畦川沿いの低地に沿って水が流出し、決壊から30分後には芦苅場自治会館から東側に400メートルほど離れた付近で止まるとシミュレーション。
浸水は、最も深いところで1メートル以上2メートル未満と想定されたが、浸水エリアのほとんどは0・5メートル未満か、もしくは0・5メートル以上1メートル未満と想定された。
二つのため池決壊で想定した浸水想定区域は、ため池専用の氾濫解析ソフトにより、地図の標高データを基に解析した。解析は、満水時のため池が晴天時に決壊し、短時間で全貯水量が流出する状況を想定した。
今回のハザードマップの公表について、市は「市民の不安を助長するために行ったものではなく、万が一悪い条件が重なり、ため池が決壊した場合に備え、地域の防災力向上や防災意識の醸成のために行ったものです」と説明している。
宮沢ため池について、市は24時間365日リモートで堤体の状況を確認できる監視カメラの設置を行い、離れた場所においても堤体の水位確認や異常時への即時対応が可能となる体制を整備している。
農業用ため池ハザードマップが掲載されている市ホームページのURLは、https://www.city.hanno.lg.jp/article/detail/5418
問い合わせは、飯能市産業環境部農業振興課または危機管理室(973・2111)へ。