独占インタビュー・下 新市長新井重治氏に聞く 「市民とともにつくる飯能市」

南口開設が待たれる西武池袋線元加治駅(線路南側から撮影)

 現職大久保勝氏との激戦を制し、飯能市長に就任する新井重治氏(68)。文化新聞は、当選の喜び冷めやらぬ新井氏に、自身のまちづくりの基本姿勢、飯能市が抱えている課題、第一に取り組むべき施策などについてインタビューした。上・下、2回に分けて紹介する。初回は21日号に掲載済み。大久保氏の任期満了は8月7日。新井氏は、10日午前8時半に初登庁する予定。

 ──教育、福祉、都市計画、環境等々、選挙中は多くの公約を訴えました。市長就任後、真っ先に着手したい施策は。

 新井氏 選挙期間中も訴えてきましたが、8年間、凍結されていた「久下六道線」を何としても事業化したいです。これについては、国、県とまず協議をして補助の採択に向けて取り組みます。その前に、まず関係地権者の方への説明を、私自ら地元に入ってやらせていただきたい。16メートル幅員の道路がどうだとか話がありましたが、やはり私は今の都市計画決定してある幅員で計画どおり整備をしたいと考えています。

 久下六道線は市街地に向かう、東の玄関口。それがあのような状況では。1日も早く整備したいです。何より、6割から7割近く(建物が)セットバックしています。税金を払って(セットバック部分を)持っていてもらっているんです。こんな不合理なことはないと思います。

 中央地区行政センターで、前の前ですが「ほっとミーティング」をやった時に、「とにかく、一番危ないのは踏切から郵便局までの間。この間の安全をまず確保してもらって、その後にこっち(西側)を整備してほしい。そういう順番だろう」という意見が結構出ました。そういうことで、郵便局から踏切までの歩道を整備したのです。

 ──幅員を広げることによって、交通安全だけでなく、防災に強いまちにもなるといわれています。

 新井氏 そうです。災害が発生した時に幅広歩道ですとか、道路幅員で火災の延焼を防ぐことができます。防災上、必要です。(担当部署は)説明会をできる資料を持っています。

 もう一つ、これは地元の話になってしまいますが、元加治駅南口の開設があります(新井氏は元加治駅がある岩沢地区に居住)。これについても、選挙戦では現職も熱が入っていましたが、これこそ私の仕事だと思っています。8年前の話になりますが、隣の入間市さんとある程度の議会レベルでの合意はいただいていたのです。やるぞ、ということではなくて、お互いの市議会全員協議会に報告するということで、報告をしていました。

 (現職は、南口開設に向け)入間市長さんとお話ができていると話されていたようですが、どのような話になっているのか、私も早速、この関係で入間市長さんのところに、まずご挨拶にお伺いし、協力をお願いしたいと思っています。

 ──阿須山中土地有効活用事業。選挙期間中、同事業について「再度、チェックする」と言われていましたが。

 新井氏 私は選挙中、阿須山中の関係について、訴えてきました。まず、今までの民間提案方式採用にあたって、そこからもう一度、私の目でチェックさせていただきます。当然、計画についてもどういうふうな行為が行われ、それによってどういうリスクがあって、メリット、デメリットがあるのかというところも含めて、チェックします。その過程で、特に問題、防災上どうか、自然環境への影響がどうかということが分かって、修正が可能だとか、部分的な見直しが可能だとか、変更が必要だとかなった時には、判断を下したいと思います。

 もう一点、必要に応じて、庁内に外部の方も入れて検討委員会的なチームを設置したい。作るとなれば、報酬であるとか要綱を設置して取り組んでいきたいです。

 ただ、両面あると思います。自然保護と防災の関係。自然保護の関係につきましては、あれだけ大規模に手を入れているので、立木の伐採、土工事もほぼ終了し、後はパネルを設置するだけくらいになっている段階で、どんなことが私の立場としてできるのか。その辺も判断材料に大きく影響してくるのではないでしょうか。

 今、中止、白紙撤回をしたとすると、事業が終盤に差し掛かっています。市とも正規な手続きで進めてきたということであり、それに基づいて県の公的な手続きも許可をとっていると。そういうものをひっくり返すと、それなりの大きなリスクも考慮しなければいけないでしょう。

 もう一つ、防災の面。下流の唐沢川は過去に複数回、氾濫しています。一昨年の19号台風の大雨の時も、私のところに「とにかく、見てくれ」と連絡がきました。現地にいったところ、水勢で住宅の基礎が剥き出しになっていました。すぐ、県土整備事務所にきていただき、土のうを積むなどの対応をしていただいた。今は大丈夫ですが、そういったことが過去に何度かあるのです。これは阿須山中の事業が始まる前の話です。ですから、私の考えでは防災上、一番怖い。地域の方も不安だと思います。口で言うより、身に沁みて見ていますから。

 サッカー場ですが、調整池を作ると。そこに調整をしながら唐沢川に放流するということですが、果たしてあれだけの17ヘクタールに降った水、そして流域面積から考えるともっと広い面積です。計算では大丈夫とのことですが、もう一度、私なりにチェックしてみたいと思っています。流れてくるのは雨水だけでないし、当然、土砂が入り、流木も混じります。相当、調整地の管理を良好にしておかないと、機能を果たさなくなるような気がします。

 ──選挙公約として「精明地区の活性化に取り組む」とうたわれています。具体的に。

 新井氏 精明地区につきましては、地域を回ってみますと、「何とかしてほしい」という意見が多いです。農振農用地、調整区域の網がかかっています。ただ、農産物の加工であるとか、農業用施設であればすべて駄目というわけではありません。農業用の加工所といったものについては、場合によっては許可の対象となります。農地法も若干、ここで緩和されていますので、そういったところで県、国の農業サイドのところにも私が直接出向いて、どんな方法ならできるのか。まったく閉ざされているものではないと思います。

 最大限、努力をして全面的にというわけではなく、部分的に活用できれば、そのような取り組みをしたいです。

 それと、「道の駅」。東京方面からの方が、狭山・日高のインターで降りて秩父方面へ向かいます。299号を通ると、道の駅は横瀬の足ヶ久保しかありません。インターから結構な距離です。それが、精明に道の駅があれば、交通安全にも供するでしょうし、そこで地場産の野菜など農林産物を販売すれば、一石二鳥にも、一石三鳥にもなります。

 今の国、県の方針としては、国県道への道の駅はあまり積極的ではないようですが、市道に設置するのであれば、協力しますよということをいただいております。例えば、国道に面した、県道に面したところから1本市道に入ったところに道の駅をつくることがいいと思います。具体的な場所についてはまだですが、道の駅では農産物を中心に販売したいと思っています。道の駅は、JAさんと共同でやれればいいですね。県にも知り合いがいますので、少し光が見えればその光を大きくできると思います。

 精明地区は土日にバスが1本。1週間に1本。乗合ワゴンが始まりましたが、あまりにもひどい。精明は大変な状況。住宅も建たないので、精明小学校の児童も減少しています。

 ──市役所全体の事務事業の見直しについては、いかがですか。

 新井氏 事務事業の点検は、やらせていただきます。事務事業の説明を受けて、続けるべきか、続けるのであれば部分修正が必要なのか、あるいは不必要なのか。判断していきたいと思います。

 ──新副市長、新教育長人事について。意中の人物はいらっしゃいますか。

 新井氏 考えなくてはいけないわけですし。9月には議会にお願いしたいと考えております。今、絞り込みといいましょうか、まったく白紙ではありません。いろいろな方から、アドバイスは頂戴しております。しっかり、私の考えでいきたいと思います。教育長について、私は教育畑を歩んできた方からお願いしたいと考えています。

 ──就任直後に市役所組織の改編作業に着手するお考えは。

 新井氏 こちらについては、今のところ、頭にはありません。

 ──最後の質問です。新生「新井市政」のキャッチフレーズがありましたら。

 新井氏 「市民とともにつくる飯能市」。対話重視を含んでいますが、これをキャッチフレーズに設定しました(終わり)。