「日本で一番暮らしたいまち」目指す 「埼玉ハンノウ大学」4月“開校”へ

飯能織協事務所前に立つ小野さん(手前左から3人目)らハンノウ大学関係者

 飯能の魅力と暮らしやすさを都内で働く子育て世代に広くアピールし、市への定住を促すなど、市民の手で飯能市を「日本で一番暮らしたいまち」とするため、地域資源を活用した生涯学習や地域振興を推進するNPO法人「埼玉ハンノウ大学」が今年4月に発足する。まち全体を大学のキャンパスとして見立て、「ヒト・モノ・コト」を再発掘し、飯能ならではのシティプロモーションを目指す。

 埼玉ハンノウ大学の仕掛け人は、飯能から2002年に英国に移住し、16年間の渡英生活を経て帰国した小野まりさん(中藤下郷)。渡英以前はリクルートで複数の情報誌の編集を手がけ、日本ナショナル・トラスト協会公認画家の夫、息子と共に英国のナショナル・トラストのスケッチ取材をしたのをきっかけに、英国コッツウォルズ郊外へ移住。市民の力で歴史的建造物や自然景観を守る英国ナショナル・トラストの活動に感銘を受け、ナショナル・トラスト運動をサポートするNPO法人ナショナル・トラストセンターを創設、代表を務める。

 小野さんは帰国後、大正時代に建築された飯能の旧・飯能織物協同組合事務所に着目。この歴史的建造物をナショナル・トラストの視点で再利用し地域活性化を目指したいとの提案を行い、駿河台大学・飯能信用金庫主催の第12回「輝け!飯能プランニングコンテスト」で優秀賞を受賞。同プランをさらに練り上げ、埼玉ハンノウ大学へと構想を広げた。

 この構想に至ったきっかけは、渋谷区のNPO法人「シブヤ大学」から講師依頼を受けたこと。「渋谷区の地域活性化のために創設されたシブヤ大学は“校舎はなく、街がまるごとキャンパス”とのコンセプトのもと活動しており、スタッフと話をしているうちに、このコンセプトはそのまま“ハンノウ大学”として、地元飯能市の地域活性化に繋がると直感した」という。

 そして、中心市街地にある歴史的建造物・飯能織協に事務局を設けることで「市のランドマークが新しい文化発信基地として蘇り、中心市街地、さらに自然あふれる地域などが、魅力あふれる文化地区となり、多くの人々が集い、活気を取り戻すことに繋がる」と、事業の立ち上げを決意した。

 ハンノウ大学が目指す将来像は「日本で一番暮らしたいまち」。

 市の魅力と暮らしやすさを都市圏に働く20代から40代の子育てファミリー層に広くアピールし、飯能市への定住を促すため、「市や企業などが行っている優良なサービスを市外に広く発信し飯能ファンを増やす」「対象年齢層が飯能の価値を効果的に得られるようにする」「飯能ブランドの付加価値を向上させる」といったマーケティング業務、市や企業などに対して地域の抱える課題と地域活性化に対して、具体的な解決策を示し、その発展を助けるコンサルティング業務を行う。

 小野さんは「“都会で働き、田舎で暮らす“が、ロンドンで働いている、生粋の英国人たちの理想。日中は活気溢れる都会で働き、夜は天空に星空が瞬き、足元の清流にはホタルが舞う、緑豊なカントリーサイドで暮らす。そうした英国人のステータスは、これからの時代の日本人にとっても共感できるライフスタイルではないか。飯能は、これからの人たちが理想とする素晴らしい暮らしが実現できる場所」と語る。

 また、社会教育に関する講演会やイベント、地域活性化に繋がるイベントを提案し、「飯能市全体がいきいきとした生活が送れる、魅力溢れる地域社会となるよう寄与する」とし、「市民に対する5つのミッション」として①学びを通して未来を拓く生きる力を育む教育の推進②飯能の魅力が伝わる多様な生涯学習の推進③運営、関わる人に成長と貢献の機会を提供④地域に関わるすべての人に愛され支えられる存在になる⑤地域にサービスを提供しながら地域そのものを育んでいく存在になる──と掲げている。

 小野さんの提案に賛同し、市内の商工業・教育・環境・福祉など幅広い分野から運営メンバーやサポーターが集まり、4月の「開校」に向け準備が進められており、「学長」を務める小野さんは「事業の主役は飯能を愛している市民の方々。多くのボランティアを募り、地元行政、企業の協力を得ながら官民連携の事業形態を目指したい」と支援を呼びかけている。