日高市議会が「反対」決議 メガソーラー計画
日高市議会(山田一繁議長)は6月定例会最終日の26日、高麗本郷の山林約15ヘクタールに民間事業者が設置を計画している大規模な太陽光発電施設について、議会として反対の意思を示す「大規模太陽光発電施設の建設に対する反対決議」を賛成多数で可決、また、国に対し太陽光発電施設の設置に関する法規制を求める「太陽光発電施設の設置に対する法整備等を求める意見書」を全員一致で可決した。同計画ついては、災害時や環境面への影響を懸念する地域住民から、市や県に事業者に対して計画の中止や取り下げを求める要望書が提出され、市議会一般質問でも複数の議員がさまざまな視点でこの問題を取り上げている。
本会議中、各議案や請願の採決が行われた後、鈴木健夫議員(公明党)から動議がかかり、鈴木議員が提出者、和田貴弘議員(絆の会)、金子博議員(日政会)、加藤大輔議員(新政会)、三木伸也議員(公明党)、大澤博行議員(絆の会)、大川戸岩夫議員(清風会)、森崎成喜議員(志正会)、橋本利弘議員(志正会)、吉本新司議員(新政会)=署名順=が賛成者となって決議案と意見書案が相次いで提出され、それぞれ提案理由説明、質疑、討論、採決が行われた。
提案理由としては、決議案は「日高市の財産である日和田山や巾着田を含む高麗地域の景観や周辺の生活環境を守り、防災並びに自然保護および自然調和に万全を期すため」。
また、意見書案は「太陽光発電事業が地域にあって住民と共生し、将来にわたり安定した事業運営がなされるために、国において太陽光発電施設の設置に対する法整備等の措置を早急に講じられるよう強く要望する」というもの。
いずれも質疑は無かったが、討論では決議案に対して田中まどか議員(萩の会)、稲浦巖議員(日政会)が「慎重に検討すべき」「継続審議とすべき」などとして反対の立場で討論、佐藤真議員(共産党)が「早急に決議をした方が市民のためになる」などとして賛成の立場で討論を行い、その後、決議案は賛成多数で可決、意見書案は全員一致で可決された。
決議文、意見書の内容は次の通り。
【大規模太陽光発電施設の建設に対する反対決議】
現在、日高市大字高麗本郷字市原地区にTKMデベロップメント株式会社が計画している大規模太陽光発電施設の建設について、以下のように判断する。
①建設予定地は、国道299号北側に位置する山の南斜面、面積は約15ヘクタールで東京ドーム約3個分に相当する。この建設によって緑のダムと言われる森林は伐採され、水源かん養機能が失われ、集中豪雨による土砂災害や水害の危険性が飛躍的に高まる。このことが建設予定地の下流域に住む市民の生命に対する重大な脅威となる。
②太陽光発電事業は参入障壁が低く、さまざまな事業者が取り組み、事業主体の変更も行われやすい状況にある。発電事業が終了した場合もしくは事業継続が困難になった場合においては、太陽光発電の設備が放置されたり、原状回復されないといった懸念がある。
③建設予定地には、埼玉県希少野生動植物種の指定を受けているアカハライモリや埼玉県レッドデータブックに掲載されている絶滅危惧種のトウキョウサンショウウオなどの希少動物並びにオオキジノオ、アリドオシなどの希少植物が生息している。大規模太陽光発電施設の建設工事が始まれば、これらの希少生物の行き場が無くなり、日高市の貴重な財産を失うことになる。
日高市の財産である日和田山や巾着田を含む高麗地域の景観や周辺の生活環境を守り、防災並びに自然保護および自然調和に万全を期すことが必要である。このことから、今後、地域住民の理解が得られないまま大規模太陽光発電施設の建設が行われることになれば、日高市議会としてはこれを看過できるものではなく、大規模太陽光発電設備設置事業の規制等を含む対策に関する条例の制定等に全力で取り組む所存である。
よって、日高市議会は大規模太陽光発電施設の建設に対し反対する。
【太陽光発電施設の設置に対する法整備等を求める意見書】
太陽光発電は、温室効果ガスを排出せず、資源枯渇のおそれが無い再生エネルギー源で、地球温暖化の防止や新たなエネルギー源として期待されている。特に平成24年7月の固定価格買取制度(FIT法)がスタートして以来、再生可能エネルギーの普及が進み、中でも太陽光発電施設は急増している。また、埼玉県は快晴日数が全国一という特徴からか、本市においても太陽光発電施設が増加し、今後もさらに増えることが見込まれている。
しかし、一方で、太陽光発電施設が住宅地に近接する遊休農地や水源かん養機能を持つ山林に設置され、周辺環境との不調和や景観の阻害、生態系や河川への影響が懸念されている。さらに傾斜地や土地改変された場所への設置は、土砂災害に対する危険性が高まり、地域住民との間でトラブルとなっている。
このため本市は、「日高市太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」その他関係法令に基づき事業者への指導を行っているが、直接的な設置規制を行えないことから、対応に苦慮しているのが実情である。
よって、太陽光発電事業が地域社会にあって住民と共生し、将来にわたり安定した事業運営がなされるために、国においては次の事項を早急に講じられるよう要望するものである。
①太陽光発電施設について、地域の景観維持、環境保全及び防災の観点から適正な設置がなされるよう、立地の規制等に係る法整備等の所要の措置を行うこと。
②太陽光発電施設の安全性を確保するための設計基準や施行管理基準を整備すること。
③発電事業が終了した場合や事業者が経営破綻した場合に、パネル等の撤去及び処分が適切かつ確実に行われる仕組みを整備すること。
④関係法令違反による場合は、事業者に対し、FIT法に基づく事業計画の認定取消しの措置を早急に行うこと。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。