指定管理、来年4月に延期 隣接地利用含む加工直売所
飯能市は、下名栗地区のさわらびの湯近くで土産品などを販売する「市農林産物加工直売所」=加工直売所=の運営を見直すこととし、昨年11月の市議会全員協議会=全協=に加工直売所隣接地を活用した新事業提案を含めた新指定管理者の公募から業務開始までのスケジュールを説明していたが、新指定管理者による管理運営開始時期について、当初予定していた今年8月を変更、来年4月に延期した。現指定管理者の「なぐり特産品協議会」=協議会=との契約は今年度末で満了するため、新指定管理者による業務が始まるまでの1年間の施設管理は、市直営となる。市は全協で変更理由などについて説明した。
市は、昨年の全協への報告後、8月の指定管理業務開始に向けて事務手続きを進めていたが、その後の地域住民や現行の指定管理者との意見交換の結果、今後の運営、「名栗まんじゅう」などの特産品の継承などについて「十分かつ、ていねいな協議、調整が必要になった」こと。
併せて、新たな取り組みとして加工直売所に隣接した約1ヘクタールの土地で行う新指定管理者による事業について、「名栗地域の創生に資する事業を慎重に検討するとともに、熱意を持って取り組んでいただける指定管理者を選定していくことが重要」との判断から、新指定管理者の選定方法やスケジュールを変更することへ舵を切った。
加工直売所は、名栗湖下方の温泉「さわらびの湯」に近接して、当時の名栗村が平成13年に地域起こしの施設として建設した。地元西川材をふんだんに使った延床面積約227平方メートルの木造平屋建てで、売店、お休み処、事務室、調理室、菓子・漬物加工室、テラスなどがある。
開設地が名栗湖へ向かう途中の高台のため、眺望が良く、周辺を山歩きする登山客らの休憩地としても活用されている。
現在の加工直場所の管理運営者は、地元住民の組織「なぐり特産品協議会」(本橋きく代表)。
協議会は、村が飯能市と合併する前年の16年12月から指定管理者として、加工直売所の管理運営を担っている。これまでの間、「ルバーブジャム」や、「名栗まんじゅう」などのヒット商品を販売している。名栗まんじゅうは、素朴な手作りまんじゅうだが、粒あんがたっぷり詰まった人気ナンバー1の「名栗の味」。
協議会との契約満了後の加工直売所の運営について、市は現行の施設運営に加工直売所脇の民有地約0・6ヘクタール含む約1ヘクタールの隣接敷地を新たに追加することを、地権者の承諾を得て決定。隣接地では、民間のアイデアを採用、農林業の振興、観光的な視点を取り入れた新たな事業を展開し、地域の賑わい、交流拠点とすることとした。
管理運営の開始時期について加工直売所は今年8月、隣接地については2か月後の10月1日と市は設定していた。
協議会とは再契約せず、指定管理者を更新するという見直しを行い、指定管理者選定の日程なども前全協で報告したものの、市は今回、新指定管理者選定方法とスケジュール変更に再度踏み切った。
前回の決定事項との大きな相違点としては、新指定管理者の公募の前段事務として、隣接地で具体的にどのような事業を実施するのかといった事業選定のために「サウンディング調査」を導入するということ。
サウンディング調査とは、ノウハウを持つ民間事業者との「対話」を通じて広く意見や活用アイデアを求め、有効活用の可能性や市場性などを把握する調査のことで、その結果を踏まえ、隣接地で実施する事業を市が決定するというもの。
民間事業者との対話の際、市が市の実情や行政課題を提示することから、課題解決に向けて民間のノウハウや創意工夫を生かした活用案(隣接地)の検討が可能となる。また、早い段階で市場性の有無や民間事業者のアイデアを調査することにより、その後の事業者提案の公募の検討が効率的に進められるというメリットがある。
同調査に基づいた隣接地の事業決定をもとに、その後、隣接地における事業を含めた加工直売所の管理運営を行う新指定管理者の募集が行われ、応募のあった事業者の中から指定管理者選定委員会による選定を経て、指定管理者が最終決定される。
飯能市で初の導入というサウンディング調査の実施について、市はホームページなどを利用して今月下旬にも民間事業者に周知する。同調査で事業提案した民間事業者と加工直売所の新指定管理者について、市は同一としたい考え。
今年4月から加工直売所の管理運営が新指定管理者により開始されるまでの1年間は、市の直営となる。このため、市は3月定例会に「飯能市農林産物加工直売所条例の一部改正案」など、関連議案を提出する。