南米支援ボランティア「SANE」 エクアドル登録NGOに
飯能発祥の国際民間ボランティア「エクアドルの子どものための友人の会(愛称:SANE=サネ=、杉田優子代表理事)」が今月、エクアドル共和国から同国で活動するNGOとして認定された。また、同会がJICA(独法・国際協力機構)に提案していた「(エクアドル国)カヤンベ郡の学校菜園と学校給食の実施を通した子ども達の学校生活改善プロジェクト」案が、3月にJICAの「草の根技術協力事業」に採択されている。SANEは、日本・エクアドル両国から「お墨付き」を得た組織となり、SANEがこれまで取り組んできた学校菜園事業は、JICAの事業としてエクアドル政府の協力を得ながら促進される事業になった。今回、エクアドルから認定された18のNGOの中で、SANEはアジア唯一。
SANEの活動の発端は、エクアドルで大地震が発生した昭和62年(1987年)、エクアドル人のホセ・アルメイダさん(通称:ぺぺ、米国在住)が、飯能にある自由の森学園高校の教員として飯能に居住していた事から、彼を慕う人たちを中心に同国支援の輪が広がった。昭和64年・平成元年(1989年)、飯能市に事務局を置く組織としてSANEが発足した。
同国内にもパートナー組織「日本エクアドル教育のための連帯(愛称:ソハエ)」を作り連携しながら、奨学金授与など教育支援を中心に活動を進めて来た。
これまで、同国首都のキトと、キト北東約70キロにある農村地域のカヤンベでの奨学金授与事業、カヤンベ近郊での学校菜園事業のほか、教育施設建設整備、職業教育、植林等を実施。カヤンベは、昭和62年の大地震の災害が大きかった地域で、ペペさんの父親の出身地だった。
30年間に約250人の奨学生を世に送り出し、医師なども多く輩出、現地ソハエの事業をリードする元奨学生も少なくない。
2007年(平成19年)、貧困層を中心とした民衆の支持を得た左翼政権が同国に誕生。これまで不安定だった政権は安定したが、欧米を中心とした外国NGO等に頼らない政策が進められ、同国内の社会組織も多くが解体されるなど、SANEは幾多の荒波をくぐり抜け活動を継続してきた。
現在は、同国のキト・カヤンベの2地域で35人に奨学金を支給し、カヤンベの6つの学校で、子ども達の栄養補給のために、野菜スープを補完食として供給する目的で学校菜園事業を支援している。
今では、この菜園事業も現地の教師たちの働きやソハエの活動で安定しているが、当初は、菜園に水を供給するための貯水池建設や農機具を買い揃えるための資金集めなどで大変だったと、杉田さんは振り返る。
この事業が軌道に乗るためには、学校の教師の理解と熱意が不可欠で、事業を実施している6校は、その条件が整っていたという。
菜園の広さは、200平方メートルくらいから1・5ヘクタールに及ぶところまで様々。学校も3~5歳児の通う学年から日本の高校3年生に相当する子どもまでが通う学校や、生徒数約340人に達する学校もある一方、日本の小学校段階だけに当たる学校まで様々で、スープを毎日提供できている学校もあれば、1日おきになっている学校もある。子ども一人あたり年間7・5ドル(自国通貨を廃止し米ドルを使用)を徴収し運営している。
カヤンベは、バラ農園の労働者として朝早くから両親が出勤してしまう家庭が多く、通学に2時間程度掛かる子どもも少なくないため、朝食を食べずに登校する子どもが大勢おり、学校での朝食支給が欠かせない。
政府からは、朝食として学校にシリアルバー、牛乳、ポタージュの粉が配給されているが、毎日同じ物であることもあり、子どもたちは好きではなく栄養も十分でないため、SANEが補完食としてスープを提供している。
菜園で栽培している野菜は、スープになりやすく栄養価の高い物を選び、レタス、ニンジン、アンデス原産のジャガイモ、ネギ、玉ネギ、チョチョスという豆、メジョッコという根菜など10種類以上を生産している。
SANEの事業は、約130人の会員の寄付が主要財源で、半数の人が年間1000円の寄付額のため、約500万円の年間総予算で、奨学金事業から、学校菜園運営事業、現地視察派遣の渡航費用などを賄っている。
今回、エクアドル政府から認定された欧米のNGOと比較すると、予算規模は2桁違うという。
エクアドル政府が方針を変え、外国NGOとの連携も模索するようになった事から、SANEも、ソハエを通じてではなく現地事業に直接携わり、学校菜園事業をより充実させ6校以外でも実施していくことを計画し、JICAの草の根技術協力事業(協力支援型)へ学校菜園事業を提案。また、事業実施のためには、SANEがエクアドルの認定NGOになる必要があったため、昨年夏それぞれに申請。3月にJICAから事業認定され、4月にエクアドルの認定NGOとなり、学校菜園事業が、日本政府を後ろ盾としたJICAの事業となり、現地で事業推進する際、エクアドル政府と話しを進める事もしやすくなった。
JICAの事業認定期間は3年間で1000万円まで支給される。用途は、日本人を現地に派遣するための渡航資金と、その関連。
事業が順調に進めば、SANEが途上国の活動支援実績を有しているNGO団体としてJICAから新たに認定され、技術協力事業の草の根パートナー型に格上げとなり、5年間で最大1億円の支援を受けられる可能性もある。
今年は、日本とエクアドル共和国が1918年(大正7年)に外交関係を樹立してから100年に当たることから、SANEは、「日本・エクアドル外交関係樹立100周年記念事業in飯能」を、飯能市内で5~6月に掛けて開催し様々なイベントを行う。SANEの実績や同会の事業がJICA認定事業になったことから100周年事業in飯能は、日本外務省の認定事業として開催される。