集落景観の保全を推進 飯能市が景観計画策定へ
飯能市景観審議会(深堀清隆会長)がこのほど、同市役所内で開かれ、市が平成30年度早々の発効をめざし、策定作業に着手している「飯能市景観計画」の素案について審議した。
市は11月1日付けで、まちの景観上、重要な建造物や樹木を保全目的で指定できる景観法に基づく景観行政団体に移行するとともに、地域の特性を生かした景観形成を図るための市や市民、事業者の責務などを盛り込んだ市景観条例を施行した。景観計画は、同条例で策定が義務付けられたもので、良好な景観形成のために建築物の形態や色彩制限などについて規定されている。
景観法(平成16年法律第110号)は、都市や農村などの良好な景観の形成を促進するための法律。同法に基づき、地方公共団体は地域の良好な景観を形成する建造物や樹木などを保全するための実施主体として景観行政団体に移行でき、現在、埼玉県内の市では飯能市を含め、17市がこの景観行政団体となっている。
飯能市は、坂石町分の吾野宿地区が県の「歴史のみち景観モデル地区」(県内8地区)に指定されているほか、県内7件の景観重要建造物のうちの4件(上名栗1、吾野宿3件)が市内にあるなど貴重な景観資源を有し、地域の個性ある景観として、維持保全及び継承していく必要がある。
また、宮沢湖については、ムーミンの住む自然あふれる「ムーミン谷」の世界観に相応しいとして、北欧の雰囲気とムーミンの世界観を体験できる施設「メッツァ」が平成30年秋以降、オープン予定。メッツァの開業に伴い、周辺地区へのさまざまな事業者等の進出が想定されるため、現在の良好な景観が損なわれないよう措置を講ずることが急務となっている。こうした背景を根拠に、市は景観行政団体への移行に踏み切った。
景観行政団体は、景観計画区域内の建築物に関して届出・勧告による規制、建築物の形態や色彩などについての制限を盛り込んだ景観計画を策定する。今回の景観審議会では、市内における景観形成の方針、建築行為の制限に関する事項などで構成される同計画案が市によって示された。
それによると、景観計画案では、市全域を景観計画区域と定め、全市域で景観形成を進める。景観計画区域の中で、観光、レジャーの拠点となる宮沢湖周辺地区については、水面はもちろん、丘陵地の緑、のどかな田園風景が広がる地域だ。同地区については、建築行為等にさらに制限がかかる景観形成重点地区として定められた。
景観形成重点地区の区域は大字宮沢、大字小久保、大字下加治、大字中山の一部とする面積約117ヘクタールで、区域内の建築戸数は約100戸。
市景観計画案では、配慮事項として建築物のデザインについて、外壁など外観を構成するものは原色に近い色彩や点滅する照明は避ける。屋外階段は、建築物本体と調和した外形・色彩とする。さらに、敷地内には県産植木類等、地域の景観に調和した植樹を植栽し、それらは道路等の公共空間に面する部分に植栽すること──などと細かく明示された。
宮沢湖周辺の景観形成重点地区ついては、市域全域の届出対象行為に加えて、①建築物②工作物③廃棄物・再生資源その他の物件の堆積④その他の開発が届出対象行為となる。
具体的には、建築物のうち、高さが10メートルを超えるもの、または建築面積150平方メートルを超えるものの新築、増築、改築もしくは移転、または外観のうち各立面の面積の3分の1を超えて変更する修繕、模様替え、色彩の変更。工作物は高さ2・5メートル以下の屋外広告物を除く工作物の新築、増築、改築もしくは移転または外観のうち各立面の面積の3分の1を超えて変更することとなる修繕、模様替えもしくは色彩の変更など。
また、景観形成基準の配慮事項として、建築物・工作物の形態・意匠は周囲の景観と調和させ、勾配屋根を基本とする。色彩は周辺集落や自然景観と馴染むよう工夫し、奇抜な色彩の多用は避ける。壁面素材については木材など伝統的な素材と調和するものを選び、光沢や反射のあるものの多用は避けることなども盛り込まれた。
景観計画ではさらに、景観計画区域内の優れた景観形成に重要な建造物、または樹木について景観重要樹木、歴史的・地域における生活や生業から形成された地域固有の建造物について景観重要建造物として、指定できる。
景観重要建造物については現在、県の景観計画によって市内で4件(吾野宿・石田家、同大河原家、同高山家、上名栗・旧平沼邸)が指定されており、景観重要樹木については未指定。
今後のスケジュールとして、市は年内2回の審議会を招集、計画案に対しての答申を得、年明け後、宮沢湖周辺地区を対象にした公聴会の開催、市議会全員協議会への報告などを経て、3月末には景観計画を告示し、4月以降施行する方針でいる。