「二ホンウナギを守れ」 全国先駆け生息環境改善事業
日本人には古くから馴染みのある魚「ニホンウナギ」。しかし、生息環境の悪化から減少していると言われ、生態についても未だ不明な点が多い。こうした中、入間漁業協同組合(飯能市阿須、古島照夫組合長)が所管する入間川を実験地に、ニホンウナギの生息環境改善に向けた取り組みを、全国内水面漁協に先駆ける形で平成28年度から行っている。
全国内水面漁業協同組合連合会によると、近年、ニホンウナギの稚魚であるシラスウナギが捕れなくなっているという。その主な要因として、生息環境の悪化等が指摘されており、ニホンウナギの資源を守るための対策が急務となっている。
入間漁協が前年度から実施している取り組みは、その対策の一つとして、流れに身を隠す場所や餌場を確保してニホンウナギを保全するとともに、その効果を検証する──というもの。
水産庁の交付金を活用した事業で、入間漁協とともに岐阜・愛媛・富山・福井県、京都府といった全国11府県の内水面漁協が行っている。入間漁協は関東地方で唯一の実施団体。古島組合長(73)が全国内水面漁業協同組合連合会の理事職にあるなどから、白羽の矢が立った。
事業実施場所は飯能市の下流、川越市内「八瀬大橋」付近の入間川。
耐久性が高いポリエステルで出来た縦横それぞれ1メートル、高さ45センチのメッシュ状のカゴ網の中に直径30センチ前後の石を詰めた「石倉」と呼ばれる増殖礁を、魚の隠れ場所がない平坦な流れに沈め、一定期間経過後に引き上げて、どのくらいの魚類が棲み処にしたかを調べた。
石倉は、平成28年11月22日に10基設置し、12月13日に河川から引き上げ、内部の石を取り出して潜んでいる魚類をカウント。
その結果、オイカワやモツゴ、シマドジョウなどの魚類、エビ類などが確認できたが、目当てのウナギの姿はなかった。引き上げた石倉は、調査後元の場所に再び戻した。
今年6月23日、前年に沈めた石倉を再調査、そうしたところ、オイカワやタモロコに混じってウナギ4匹が石と石の間に出来た隙間に隠れているのを発見。石倉カゴ増殖礁がニホンウナギの生息に効果があることが分かった。石倉カゴ増殖礁が設置された周辺について、入間漁協は釣り禁止区域に設定した。
古島組合長は「50年ほど前は、入間川の矢颪堰下には毎晩のようにウナギを捕る人の姿があった」と懐かしむ。
入間漁協は、石倉設置といった生息環境改善事業のほか、体長20~25センチほどのウナギを毎年10キログラム、飯能地方などの入間川に放流し、貴重な資源の保全に力を注いで