窓口でテレビ電話対応 外国語通訳も可能

 飯能市は、耳の不自由な人のために市役所窓口にタブレット端末を導入し、委託した手話通訳者とテレビ電話での意思疎通を可能にする支援事業を6月から開始する。

 この端末は、英語、韓国語などを認識して、日本語で表示する機能や、日本語を英語、韓国語に文章化する機能もあるため、耳の不自由な人だけではなく、日本語の話せない外国人にも、円滑に行政サービスが提供できるシステム。

 平成28年4月、障害者差別解消法が施行されたことに伴い、障害に関わりなく誰もが平等な権利を享受できるよう、一人ひとりに合わせた「合理的配慮」が求められるようになった。

 タブレット導入はその配慮の一環。タブレットを活用した窓口での支援事業を実施している行政機関は珍しく、厚生労働省、東京都、東京都港区くらいと言う。

 同市では、耳に障害のある人のために、手話通訳者の育成や採用も検討してきたが、専門技術を持った職員の養成は容易なことではなく、これまでは、必要性が生じたときに、県の委託で手話通訳者を派遣してもらい対応してきた。

 しかし、この方法では、事前に申込があった人にしか対応できず、事前アポがない場合は筆談で意思を確認していた。

 今年度予算に570万円を計上、障害者福祉課と市民課などの窓口にタブレットを導入する。

 仕組みは、手話が出来る人が来庁したときには、タブレットを活用し、委託した手話通訳コールセンターへテレビ電話をつなぎ、来訪者と通訳者が手話で会話し、通訳者が市職員に来訪者の意図や意思を伝え、市職員が対応する。

 手話が出来ない耳の不自由な人が窓口を訪れ、声で意思が伝えられる場合は、その音声をタブレットが認識し文字化、その文字を通じて職員とやり取りする。

 声を出す事も難しい人に対しては、タブレット画面への指タッチによる筆談が出来る。

 現在、同市に居住する聴覚障害者手帳所有者は160人、そのうち手話が出来るのは30人。高齢者が増加し、加齢により耳が遠くなった人も窓口で来訪の意図を伝えやすくなり、職員の説明も理解しやすくなる。

 さらに、英語や、韓国語など多言語への通訳も可能で、日本語が出来ない外国人にも行政サービスの提供に活用出来る汎用性の高い事業。

 今年度は、利用の多い障害者福祉課と、市民課にタブレットを常設し、他の課に耳の不自由な人が訪れた場合は、タブレットをその窓口に移動して意思疎通を図る。

 利用状況を見て、この支援事業が大いに役立った場合は、来年度以降も予算化し順次タブレットを増やしていく予定。

 さらに、市では代理電話支援事業も始める。

 耳の不自由な人が、市や市関連施設に電話で問合せを行う場合、自分のスマホを通じて手話通訳コールセンターにつながるようにして、スマホを介したテレビ電話で、手話による会話を行い意思を通訳者に伝え、通訳者が本人に代わって市役所担当課に電話する。回答は、逆の過程を通じて本人に伝えられる。

 手話が出来ない人は、メールやFAXを使って内容を伝え、通訳者が代理電話することも可能。

 委託する業者の選定はこれから。来月、障害者手帳所有者らへの説明会を開き、窓口でのタブレット活用法や、スマホの登録などについて解説する予定。

 同市では、タブレットによる支援事業と並行して、今後も手話通訳者の養成などにも取り組んでいく。