ワカサギ親魚の採捕始まる 流れ込みに「ふくろ網」設置
入間漁協(古島照夫組合長、飯能市阿須)は28日、埼玉県農林総合研究センター水産研究所(加須市)と合同で、同市下名栗の名栗湖(有間ダム)の流れ込み部分に、産卵のため湖から遡上してくるワカサギ親魚採捕用の網を仕掛けた。
採捕したワカサギは、別の場所に用意した生け簀内で産卵させ、受精卵を人工孵化器を使って孵化させた後、来シーズンの釣り用として名栗湖へ放流する。
名栗湖は、入間漁協が管轄する県内でも有数なワカサギ釣り場。11月からの解禁に備え、同漁協はこれまでワカサギの受精卵を北海道網走の業者と長野県諏訪湖から入手していた。
平成26年度2000万粒、同27年度3000万粒、同28年度1700万粒を購入して名栗湖に放流。同漁協は29年度分についても従前にならっての種苗放流を計画したが、購入元で作業員の高齢化とともに親魚死滅といった問題が発生、来期分のワカサギ卵入手が困難な状況に。
このため、県水産研究所と協議。卵供給が完全にストップする最悪の事態を想定、ワカサギの自然産卵が確認されていた名栗湖で、同研究所のノウハウをもとに産卵を控えた親魚を採捕し、人為的に産卵、孵化させ、他に頼らない自前のワカサギを生産することとなった。成功すると、県内単位漁協として初めての快挙となる。
親魚採捕用の「ふくろ網」は、直径約1メートル、長さ4~5メートルほどの筒状。遡上してきた魚を筒の中に誘導するよう、片側(下流側)の左右がつい立て状に開いている。仕切りに進行を妨げられた魚は、必然的に仕切りに沿って泳ぎ、筒状の網の閉じられた最先端部(上流側)へ最終的に集まる。
網に集まったワカサギの親魚については、漁協関係者が毎日見回りして回収し、上流にある観光釣り場に移送、採卵用生け簀に投入する。ワカサギ親魚はこの生け簀の中で産卵、受精する。孵化間際となった受精卵は、名栗湖にあるカヌー工房の浮き桟橋に設置する孵化器内で孵化した後、湖へ放流される仕組みだ。
ふくろ網設置作業を行った関係者は、「今日は前日の雨で水量が増えたからか、ワカサギの姿は見えないが、数日前の下見では何百匹と群れていた。採捕が上手くいき、産卵、孵化してくれれば名栗湖の釣り場としての価値は一層高まる」と期待をかける。