駿大野球部1部で粘闘誓う 人間的成長と体力が土台
「選手の『人間的成長』が第一」と語るのは、駿河台大学(飯能市阿須)野球部を、東京新大学野球連盟の1部リーグ昇格に導いた同部監督・野林大樹さん(47)。
同大野球部は、昨秋の2部リーグ戦で優勝、入替戦を勝ち抜き、今春1部再昇格を果たした。同大野球部を率いる野林監督は、1部定着を目指し、選手たちの人間的成長を促している。
野林監督は、東京出身。日大三高に進学し、打撃力のある大型内野手として活躍。ドラフト2位で近鉄バッファローズに入団。同球団など11年間のプロ野球生活で3チームに在籍している。平成10年に引退後は、インドネシアで野球の普及と指導に携わるなどしていた一方、埼玉県三芳町の淑徳大学野球部で助監督、東京の成蹊大学野球部監督を歴任。平成26年春、駿河台大学野球部コーチに就任した。
就任直後の春の2部リーグ戦で、いきなり10勝0敗で優勝という快挙に貢献。翌27年の春リーグ戦でも優勝、入替戦にも勝利し、同大野球部に初の1部昇格をもたらし監督を任された。
しかし、2部では9勝1敗の好成績で優勝したものの、初の1部リーグで戦った27年の秋のリーグ戦は、0勝10敗で6位、入替戦も2連敗し1季で2部に逆戻りしている。
「間違いなく0勝だと思っていたので想定内。野球はそれほど甘くない。でも、これで選手の目の色が変わり、いい経験になりました」と、野林監督は冷静そのもの。
同大躍進の土台づくりは、当たり前のことが当たり前にできるように、自らが気づき人間的成長を果たすこと。技術について細かく指導するのではなく、「あいさつ」「返事」「時間厳守」「身だしなみ」が、野林監督が定めた同大野球部4つの規律だ。
「強豪校ならば、どこでも、こういった当たり前と思われることに厳しいはずです。自分勝手なことをせず、自分で考えてやるべきことに気付き、我慢して絶対ボールを振らないとか、絶対点を与えないと考え我慢できるようにならければ」と語る。
秋のリーグ戦頃になって、周囲から「野球部の選手の態度が変わった」という声をよく耳にするようになったという。
そして、体力作り。一流選手は、例外なく体が強く、体力作りは気力作りにつながり、練習にも集中して取り組むことができ技術も身に着くが、体力がないと集中力が続かず飽きてしまう、と説明する。
今回の1部昇格の原動力の一つは、エース貫井大地投手(経済経営学部3年、川越総合高出身)の成長だ。
入部したときは、球速128キロくらいだったが、秋のリーグ戦の頃には、最速147キロを記録した。
「2年生の冬、『上でやりたい』という希望を聞き、指示に従うというので、徹底的に走らせました」(野林監督)。
貫井投手は「朝から晩まで走ったり、タイヤを引っ張ったり、下半身を徹底的に強化してからピッチングを始めました。投げた感覚が前と全然違い、監督の言う事を信じてよかった」と、目を輝かせて感謝する。
リーグ戦では、貫井投手を登板過多にならぬよう大事に使い、1部との入替戦で3連投。
第1戦を落とし、2戦目は、先発した1年生投手が、初回5点を失い追い込まれたが、そこから立ち直り以後は1点も与えず、チームは8点取って逆転。継投した貫井投手で逃げ切った。3戦目は、その勢いで1年生・松薗那央也投手と、貫井投手の完封リレーで再昇格をつかみ取った。
野林監督は「一部残留が目標。相手の足元にくらいつくような野球をしなければ勝てません。優勝なんて長期計画で8年後」と冷静にチーム力を分析。
貫井投手は、「球速が上がった直球と、得意のフォークがどれだけ通用するのかが楽しみです。駿大からもプロになれるというところを見せたい」と意欲満々。
また、入替戦に先発した飯能南高校出身の1年生投手・清水陸さんは、「貫井さんを見習い、まず体力作り。筋力アップして体重を増やしたい」と話す。野林イズムが1年生まで浸透しているようだ。