トラスト保全2号地取得 エコツアーの新拠点に
ナショナル・トラスト保全地「ほとけどじょうの里2号地」が誕生。
自然保護運動に取り組み、エコツーリズム活動を推進している「NPO法人天覧山・多峯主山の自然を守る会(てんたの会、代表理事・浅野正敏さん)」は1日、西武鉄道から天覧山東側の山林約800平方メートルを購入した。
てんたの会では、ナショナル・トラスト運動を展開している隣接の同1号地(約600平方メートル)と合わせて、生物多様性あふれる里山として保全するとともに、市民や子どもたちが自然に親しむことができる場として、整備していく方針。
トラスト運動は、歴史的建築物の保護や、自然的景勝地保護を目的にしたイギリス発祥の運動。日本では、昭和43年に財団法人観光資源保護財団が設立されたのが起源。
てんたの会は、天覧山周辺の開発計画が持ち上がったのをきっかけに、平成7年8月発足。署名活動など、あらゆる手立てを用いて開発計画の白紙撤回を求め続けた結果、同12年、開発計画が中止された。
てんたの会会員は、計画中止運動を続けていく中で、天覧山東側の東谷津の田んぼを、一人で草刈りなどの手入れをしていた所有者のおばあさんに出会った。
自然の里山管理の一貫として、いつしか会員が手伝うように。所有者が亡くなり、後継者は管理を持てあまし、自然を保全してくれるならばという条件で、てんたの会に買い取りを持ちかけた。
しかし、農地だったため、本来は農家以外の団体等が買い取ることができない土地だったが、「全国的にも例がないが、特例として、てんたの会がNPO法人になり、環境歩全のために、この土地を守っていくならばという条件付きで、農業委員会が農地法を解除して同会の取得が、平成21年に実現しました」と、代表理事の浅野さんは振り返る。
この土地は、「ナショナル・トラスト保全地」となり、天覧山周辺の自然保護活動を行っている同会の拠点になった。
希少生物のホトケドジョウの生息が確認されたことから、会員は、「ほとけどじょうの里」と呼んでいる。
この土地を、カエル、トンボ、サンショウウオなど豊かな自然に生息する多様な生物が暮らしていけるビオトープに整備。環境省の依頼で、カエル、ホタル、チョウ、哺乳動物、植生の調査なども年間通して継続している。
同11年、飯能地域がエコツーリズムのモデル地区に。開発計画の中止はまだ発表されていなかったが、当時自然保護運動を推進していた団体は、飯能では同会しかなく、同会の活動は「公認」される形になった。
エコツーリズム活動として認定されたことで、都内や県の他地域の人たちが、エコツア―体験者として、参加費を払って天覧山周辺の自然保全活動に来るようになった。
それまで、運営費はすべて会員の負担だったが、てんたの会の財政基盤は安定し、人手が確保され、他の地域の人にも豊かな自然を経験してもらうことができるようになり、「活気的なエコツーリズムに成りました。環境保全の素晴らしい手法が出来上がった」と、代表の浅野さんは嬉しそうに振り返る。
同会は平成25年、開発計画から森を守り、行政と企業の協働により里山を保全してきた活動が評価され、第12回日本自然保護協会沼田眞賞を受賞した。
「むかごを採取し、むかごご飯を炊き、汗を流し泥んこになって作業を楽しむ。補助金で石窯も整備でき、石窯で焼いたピザは、会員にも参加者にも大好評です」と、浅野さんは楽しそう。
現在は、春サクラの咲くころと、クリスマス飾りを作る年2回のエコツアーだが、いつも好評で参加者が定員を割ることはない、という。
今回、このエコツーリズムの拠点になっている1号地の北側隣接地を、所有者の西武鉄道と数年の交渉の末、買い取ることができた。
資金は、会員から募った寄付のほか、(公財)自然保護助成基金と、(公社)日本ナショナル・トラスト協会からの助成支援も活用した。
新たに取得した土地は、現在笹薮になっているが、農地ではないため、農地法などの規制もなく、1号地と合わせて、生物多様性あふれる里山として保全し、自然に親しむことができる場所として整備していくことを、同会では検討している。