山里から住宅地へ拡大 有害鳥獣の農作物被害

市が市民に無償で貸し出しているアライグマなど、小・中型動物用の捕獲わな

 市域の三方が山林や丘陵で囲まれている飯能市は、その地勢からイノシシやサルなどの野生動物が出没しやすく、農作物被害が絶えない。

 最近では、住宅の軒先近くにまで現れたイノシシによって、住民が威嚇されるなど、徘徊場所は山里の田畑から市街地に近接する住宅地へと拡大傾向を見せ始めている。こうしたことから市は、農作物の被害防止のため、地元猟友会に委託し、2月16日から銃などによる有害鳥獣の駆除に乗り出す。

 有害鳥獣の駆除作業について、市は前年度も秋と春の2回実施している。秋は9月12日から11月3日まで、春は28年2月16日から3月27日までの間で、いずれも飯能猟友会に委託して行った。

 その結果、前期にイノシシ11、シカ30、ハクビシン2、アライグマ1頭を、後期についてはイノシシ14、シカ23、アライグマ1頭をそれぞれ捕獲、一定の成果を上げた。

 来月から予定している駆除作業についても、前年同様、飯能猟友会に委託する。方法は銃とわなの二通りで、期間は3月21日まで。

 野生鳥獣による農作物被害は、飯能市だけでなく、埼玉県全体でも深刻だ。平成2812月県議会の一般質問では、野生鳥獣による農作物被害の問題が取り上げられ、県内におけるその被害額は、27年度で1憶2026万円との答弁が行われている。

 市農林課によると、有害鳥獣による市内の農作物被害は、平成27年度で約17万7000平方メートルの農地で発生、金額にして約4400万円が食害された。とりわけ、イノシシが地面を掘り返して、イモ類などを食害するケースがめだったという。

 平成26年度をみると、農地の被害面積は約19万平方メートルで、被害総額は約5000万円。27年度の被害実態を上回っているが、ただ、これについては山林で隔年発生している木の実など野生動物の餌不足が起因していると、農林課は推測する。

 裏付けるように、野生動物による市内の農作物被害は1年間隔で著しく、全体でみると、被害は右肩上がりという。

 加治地区の落合では、昨年、住宅地にイノシシが現れ、作物を食い荒らす姿が大勢の住民に目撃されている。幸いにも人的被害は報告されていないが、同地区では田んぼの水路の石垣が餌となるミミズを探すイノシシに何か所も崩され、その都度、農家が修復するといったイタチごっこが続いている。

 来月からの銃とわなによる捕獲予定区域は、前記落合のほか名栗地区、吾野地区、東吾野地区、原市場地区、飯能地区(飯能の一部、久須美、小瀬戸、大河原の一部、小岩井、茜台、永田、永田台)、南高麗地区(岩渕の一部、下畑、上畑の一部、苅生、下直竹、上直竹下分、上直竹上分)、加治地区(阿須の一部)。

 市は作業委託費として50万円を計上済みで、期間中はイノシシ、ニホンジカ、ニホンザル、ハクビシン、アライグマを駆除する。

 市農林課は「捕獲のため、ハンターが近くの山林などに立ち入る場合があるので、ご協力をお願いします」と理解を求め、手入れなどで山に入る場合については目立つ色の衣服の着用や、音が出て自分の所在を示す鈴などの携行を呼び掛けている。

 有害鳥獣捕獲の問い合わせは、飯能市農林課農務担当(973・2122)へ。